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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第5回 褥瘡ケア ―治癒過程に即した局所ケアの実際―

社団法人日本看護協会看護研修学校 皮膚・排泄ケア学科
溝上 祐子

ライブ研修 6月4日(水)/ オンデマンド研修 6月6日(金)〜6月20日(金)

褥瘡の局所ケアをプランするには創傷の治癒過程のメカニズムの理解が必須である。
創傷治癒過程は(1)炎症期(2)増殖期(3)成熟期の3段階に分けられる。炎症期は創の清浄化が求められるため、連日に交換でき、滲出液コントロールを目的としたドレッシング剤が適している。感染創では白血球など貪食作用の働きを助け、感染をコントロールする処置が大切でドレナージ、洗浄、殺菌剤の使用などの処置を行う。壊死組織が残る時期ではデブリードメントが重要である。増殖期は肉芽増殖に活躍する線維芽細胞、血管内皮細胞、上皮細胞などの細胞が働くために適度な湿潤が必要である。このように治癒過程に即したプランが必要である。
今回は治癒過程をわかりやすく、解説し、症例を提示しながら、治癒過程に即したドレッシング材や外用薬の選択の実際を紹介する。

発信会場:日本看護協会看護研修学校(東京都清瀬市)

第5回 褥瘡ケア ―治癒過程に即した局所ケアの実際―

質疑応答

  • 講義の中でフィブラストスプレーを褥瘡のポケット内に入れて治すという話がありましたが、以前担当した患者さんが大転子部に褥瘡を作り、ポケットだけ残して塞がって、最後の最後に開口部が針穴のように残ってしまって、ポケットの大きさも変わらないというケースがありました。フィブラストスプレーをポケット内にうまく噴射することができず、生理食塩水に1回分のフィブラストスプレーの量を溶解させて1年くらい入れていたことがありましたが、それが使用法として間違っていたのかどうか、メーカーの方には推奨しないとは言われましたが、臨床的にやっても良いのかアドバイスをお願いします。
    講義の中のフィブラストスプレーを入れてケアした症例は私がやったわけではないのですが、私でしたら使いません。これはフィブラストスプレーが効いて小さくなったわけではなく、創底から出る浸出液を直ちに吸い上げて戻さない、それが一番効果あったわけで、フィブラストスプレーを使わなくてもポケットが治ったと思うのです。
    針穴のようになってしまった場合は管理が難しいですが、ポケットが治らない場合、その方向にずれ力が常にかかるような体位をする習慣や環境がないか、もう一度見直す必要があると思います。
  • 徹底的に見直して何が問題か調べて影響がないようにやっ たのですが、中のポケットが残ったまま開口部が塞がって、100歳を超える方だったためそのまま老衰で亡くなってしまいました。硬縮もひどく、ご家族からはお金をかけずに治してほしいという注文を受けて、どうしたものかと思ったのです。
    今日の講義は褥瘡を治すということを目標として話しておりましたが、基本的にその方がもっとお若くてアクティブに治していきたいと思ったら、まず瘻孔造影をします。

    見た目は針穴のようですが、脊損や硬縮とかあるような方は、瘻孔造影をするとかなり深いところまで線状に続いていることがあります。そんなケースでは創底まで切開しなければ治りませんから、そこまでする必要があるかどうかですね。リスクとしては奥が深くても入り口が小さければ、その中で常在菌が感染することがありますが、感染がなければ、毎日きちんと観察し、そこにずれ力がかからないか環境が整えるだけでも良いと思います。

    治すために大胆にやらなければならない場合、その方にとってしあわせかどうか。100歳を超えて在宅でもあって、こういうシチュエーションだと何を優先するべきなのかで変わってきます。そこまでやって治癒するのが必要かどうか、関係者でカンファレンスするべきだと思います。
  • 施設ではピュアレックスの上に普通のマットレスを敷いて使用しています。それではピュアレックスの効果が半減するのではないかと思うのですが、吸収性が悪いからということでそういう使い方をしていますが、いかがしょうか。
    効果ないですね。ピュアレックスは静止型の分散するマットレスです。柔らかいところに乗せて圧を分散させる機能のものですので、その上に通常のマットレスを載せてはせっかくの効果が台無しです。使い方は誤っています。
  • ハイドロコロイドなどのドレッシング剤は漏れがなければ1週間くらい交換しなくて良いと書いてありますが、観察の点を考えると、つい早めの交換を設定して3日くらいで替えてしまっています。ドレッシング剤を貼って瘡が見えない状態について不安があるのですが、その判断はどうでしょうか。
    保険上の決め事では、皮下組織に到る傷でなければハイドロコロイド剤は使えないことになっています。想像するにそういった類のものを1週間替えなくてすむ傷というのは、浸出液がない状態ですね。せいぜい乾燥した壊死組織が着いているということはありえます。
    プラニングしていくときに、治癒過程で言えばどの時期の傷かをみます。上皮が張ったような成熟期であるような状態ならば、1週間貼りっぱなしでもかまいません。しかし炎症期であったりすると1週間は貼り過ぎですので、状況に応じて判断します。

    もしも観察のために開けるのを希望するならば、3日で開けて大丈夫なドレッシング剤に替えるべきです。本来は1週間貼れるものを自分が観察したいから3日ではがすことによって、周囲の皮膚がブレイクすることもあり得ます。傷をときにアセスメントして、この傷に対してのプランはこれだと考え、炎症期にあれば毎日でも洗浄して診なければならないし、成熟期になって赤い肉芽になってくると毎日診る必要もありませんので、とにかく傷を見て治癒過程を判断し、使うドレッシング剤を選ぶように考えるのが良いと思います。
  • 褥瘡の予防について伺います。150キロくらいの体重の患者さんが病棟にいらして、体位変換もシムス位か腹臥位でなければ肺がつぶれてしまうということで行っているのですが、夜間には人員が足らないために思うようにいきません。何か良い道具ややり方があれば教えていただきたいと思います。
    日本では150キロ級の方はあまり多くなく、痩せた高齢者の方が褥瘡になることが多いですよね。大変ですが、2時間ごとの体位変換はひとつのルールとして作ってあるもので、たとえば3時間放っておくと発赤が生じて圧が高くなるかということですよね。もし体位変換が人員的に大変であれば、少し根拠を出した方が良いので、セロとか簡易型体圧計で圧を計って、3時間くらいOKとか4時間くらいOKとかあってもいいと思います。

    ただ、人手がないので意識のない入院患者さんの体位変換をしないというのは表立っては言えませんので、できるだけ圧がかからないように分散するマットレスを選択するなどもいいですし、今は体位をローテできるマットレスもありますし、マットレス自体の体重設定の許容範囲も高いものも多くなっています。施設でメーカーなどに相談して選んでいくのが良いかと思います。