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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第3回 人工呼吸器を理解するための基礎知識

杏林大学医学部付属病院
戎  初代

ライブ研修 5月7日(木)/ オンデマンド研修 5月11日(月)〜6月1日(月)

人工呼吸器が必要となる病態は、急性期から慢性期と幅広くあります。人工呼吸器を使用する時に患者にとって安全で安楽な人工呼吸管理を行うためには、機械の特性を知り機械から得られる情報をアセスメントする能力が必要とされます。本講では、人工呼吸器を使用することによって患者に与える影響と人工呼吸器から得られる情報をアセスメントできるようになるための基本的なことを学んでいきましょう。

発信会場:発信会場:新葛飾病院(東京都葛飾区)

第3回 人工呼吸器を理解するための基礎知識

質疑応答

  • 患者モニターに表示されている"R"という値(エビタⅡで)気道抵抗を示していますが、具体的な数値の見方とその値が示すリスクを教えてください。
    気道抵抗は気管挿管チューブ使用だと5cmH2O/L/secくらい(気管挿管チューブのサイズと吸気流量によって値はさまざまです)で、それ以上多くなると気道の抵抗が増しているということになります。補足説明:人工呼吸器の種類によって、気道抵抗の計測の仕方が違っていたりします。一般的に気道抵抗が上がっているということは喘息などの気道狭窄や人工気道内腔の狭窄などが考えられます。喘息などの病態的な問題であれば、肺聴診などで気道狭窄の程度の変化をアセスメントすることができると思います。また、気道抵抗が表示されない人工呼吸器であれば、最高気道内圧の上昇時にはプラトー圧の変化をトレンドで観察すれば、気道抵抗が上昇しているためなのか、肺コンプライアンスが悪くなっているためなのかをアセスメントすることができます。
  • 気管挿管のカフエアーの確認は1日に何回行なえばいいのでしょうか? 現在は1勤務1回(1日3回)のペースで行なっています。
    4時間おきにカフ圧をチェックするのが良いと言われているものもあります。実際の現場では4時間に1回カフ圧をチェックできない状況があります。4時間に1回でなくて各勤務に1回でも必ずチェックをするというのは重要だと思います。
  • 離脱、ウィニングしている患者さんで、よくドクターがピープやプレッシャーサポートを変えていくのですが、その後の観察をどういう風にしていけば良いのかよくわかりません。教えてください。
    PS:プレッシャーサポートを減量するときの観察:
    PSを減量した場合には患者の吸気に合わせた圧力のサポートが減る為、一回換気量が低下していないか?呼吸パターンが苦しそうな呼吸になっていないか?を観察します。減量する前のPSが患者にとって必要以上の圧力であれば、減量することによって一回換気量が低下することは考えにくいです。もともと必要ない多さの圧力を与えていたということになりますが、この状況で患者にとって何が変化するか(私たちには見えない部分で)というと、患者の呼吸仕事量が変化していると考えられます。この状況ではPSを減量する前までは吸気の時の努力(患者の呼吸仕事量)が極わずかで事足りている状態で、PSを下げることによって、より普通の呼吸に近い呼吸仕事量となっていると考えることもできます。このような場合は、患者にとってのデメリットとなる可能性のある一回換気量の低下や呼吸パターンの変化はおこりません。しかし、PSに依存して呼吸していた患者の場合には、その圧力がないと呼吸が楽にできない(圧力無しで普通に呼吸する力が患者自身に備わっていない)状態である場合があります。このような場合には、PSを減量して短時間のうちに一回換気量が低下や、呼吸パターンが悪くなる可能性があります。PSを減量した後に、一回換気量の低下(二酸化炭素を排出できない状況)や呼吸補助筋の使用、頻呼吸といった状態になった場合には、原因がPSを減量したことであれば、医師に報告し人工呼吸器の設定を調節する必要があります。

    PEEP:ピープを減量するときの観察:
    PEEPというのは肺を広げておく効果があり、これは酸素化に影響しています。PEEPは患者の病態にもよりますが、急激に下げすぎると肺胞虚脱が起こる可能性があります。PEEPというのは、酸素濃度(FIO2)を15分おきに下げられるのとは違って、慎重に下げなくてはならないと言われています。PEEPを下げた変化(影響)は時間が経過してから現れることがあります。私の経験では、PEEPを減量した場合最低でも2時間は酸素化に影響しないか待ちます。たとえば2cmH2O下げて2時間以上経ったが酸素化に影響していないのを確認してから、またPEEPを下げるというやり方になります。PEEPを減量した時には、もしかしたら肺胞が虚脱してしまうかもしれないことを頭にいれ、サチュレーションが下がらないかどうか、呼吸パターンが変わらないかどうかを見る必要があります。