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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第9回 疼痛のアセスメントと看護 [基礎]

杏林大学医学部付属病院
坂元 敦子

ライブ研修 8月5日(水)/ オンデマンド研修 8月10日(月)〜8月31日(月)

がん性疼痛は、耐え難い苦痛であり、恐怖や不安であり患者にとって深刻な問題となるものです。近年では、WHOが紹介するがん疼痛治療法の実施や薬剤の開発によって、多くの患者が痛みから解放されるようになりました。しかし我国では、疼痛管理への理解が十分でないことや誤解等によって痛みの軽減が図れず、患者へのケアも困難に感じることがあるのではないでしょうか。ここでは、痛みを緩和しQOLの高い生活を送れるよう支援するために、がん患者の疼痛、疼痛アセスメント方法、疼痛の看護について解説します。

発信会場:発信会場:平塚共済病院(神奈川県平塚市)

第9回 疼痛のアセスメントと看護  [基礎]

質疑応答

  • がんによる痛みと、その他の原因による痛みの評価は、どのような点で判断するのがよいでしょうか?
    患者さんの痛みのアセスメントをするのが何より大事だと思います。どこがどのように痛むのか、いつから、どんな感じで痛むのか。それから患者さんが受けている治療に関することも重要な情報だと思います。放射線の話を例にすると、たとえば粘膜障害がおこるような部位に放射線をかけているような場合、治療部位によっては嚥下時に痛みがあったり、お腹にしぶり感があったりと、そういうような症状が出てくることもあるかと思います。患者さんが受けていらっしゃる治療や日常生活の色々なことも、きちんと目を向けて情報を整理することが必要だと思います。
  • 痛みの原因ががんの痛みとわかっていれば積極的にオピオイドを進めていくのですが、がんの痛みでなく例えば急性の疼痛、急性の腹症だったり胆嚢炎だったりして痛みが発生しているなど、がんの痛みでない場合もやはりオピオイドを積極的に使っていってよいのでしょうか。また、急性の痛みのケアとして、他に何かプラスしていくことはありますでしょうか。
    まず急性の痛みにオピオイドを使うのかという質問ですが、痛みのケアというのは急性痛でも慢性痛でも基本的には同じだと思います。痛みの強さに合わせて適切な薬物療法を選択する、というのが基本です。ですから、強い痛みであればオピオイドを使うということもあろうかと思います。バランスが取れて適切な選択であれば、急性痛にオピオイドを使用することは医学的に問題ありません。また、倫理的にもぜひやらなければならないと思います。急性痛であろうと慢性痛であろうと、患者さんが痛みを感じているという事実に変わりはありませんので、その痛みのコントロールにふさわしいものがオピオイドだとすれば、躊躇する理由なく、使うべきだろうと思います。
    臨床で仕事をしていますと、徐放性の薬は慢性痛に使えるけど急性痛の時には使えないと、知識のある医師たちはよくご存じです。たとえば即効性のモルヒネとかはどんな場合でも使えるけど、持続時間の長い薬は保険の適応にならないということです。ただ、がんという診断がついた患者さんに対してそれを使うことは、大きな問題になることはないですので、多くのオピオイドの中から選択ができると思います。

    もう1つ、急性痛の痛みの緩和の方法ですが、急性痛ですから一過性のものとは思いますけど、急性痛の場合は痛みの原因がはっきりしていると思います。手術による痛みであったり、化学療法の粘膜障害だったり、理由がはっきりしているものが多いです。それについてのケアを十分にすることは必要です。たとえば粘膜障害であれば、乾燥を予防する、刺激の強いものを召し上がってはいないだろうかとか、そういった原因に対してのケアを丹念に考えていくことが必要です。
  • 痛みについて質問されたくない患者、痛いことを知られたくないようにしている患者さんには、どのように介入したらよろしいでしょうか。
    これも臨床の現場で何度も出会うケースです。まず、なぜ患者さんが痛みの表現をされないかということに関心を持ちます。痛みはとても辛いものなのに、それを表現しないというのは、何かの理由があると思います。それを何としても聞き出して・・・というのは難しいことです。「痛みはありませんか?」と、まずストレートに聞いてしまうよりも「何かおつらいことはありませんか?」と、オープンな開かれた質問から入っていきます。すると、痛みということについての答えはなかなかおっしゃってくださらなくても、あれが、これが、という話がだんだん出てくることがあります。たくさん会話する中から、話が「痛み」ということに関連している場合が多々あります。総合的な問題だと思いますので、病気の進行と痛みが関連していないかということで、患者さんがとても不安を抱えていたり、痛いということを言えば、薬や入院を勧められたりするのではないかと心配したり、患者さん側で構えてしまっていることも多いと、臨床の場では思います。話しているうちに何かの糸口が見えた時には、その心配はありませんと伝えるようにしています。たとえばオピオイドの誤解ですとか、怖い薬ではないということとか、痛みが強いから病気が進んだわけではなく、コントロールをすればまた回復していくとか、お話をしていくようにしています。