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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第5回 正しい酸素療法を知ろう [基礎]

杏林大学医学部付属病院
露木 菜緒

ライブ研修 6月2日(水)/ オンデマンド研修 6月7日(月)〜6月28日(月)

酸素療法に用いる器具は種類もたくさんあり、医師の指示によるとはいえ、混同することはありませんか?ナースが日常的に行っている酸素療法ですが、そのしくみや正しい使い方は意外に知られていません。酸素療法も使用方法を間違えれば生命に直結するエラーにつながります。酸素療法に関する事故事例も振り返りながら、今さら聞きにくい正しい酸素療法について解説していきます

発信会場:発信会場:荻窪病院(東京都杉並区)

第5回 正しい酸素療法を知ろう [基礎]

質疑応答

  • 高流量システムと低流量システムについて質問です。50%以下の濃度で確実に酸素濃度をコントロールして患者さんに投与したい時は、高流量システムで徐々に酸素をテーパリングしていくのが使い分けかと思いました。当院ではベンチュリマスクがなくインスピロンを使用していますが、煩雑な面もあって実際の臨床では低流量タイプの酸素濃度で、患者さんのタイダルボリュームが500CCくらいだとすれば、だいたいの酸素濃度というのはコントロールできるというスライドがあったと思うのですが、そうするとインスピロンにしなければいけない症例だとか、どういう時に高流量タイプにするべきなのかとか教えて下さい。
    使い分けについてですが、高流量システムの方が安定して酸素投与ができるという利点があります。低流量システムだと患者さんの呼吸状態によって酸素濃度が変わっていってしまいます。高流量システムでは、トータルフローを30L/分以上になるように設定すれば、患者さんが不安定な呼吸をしていても、常に設定した酸素濃度で投与し続けていられますので、管理面では楽になります。さらに、インスピロンネブライザーシステムを使っているのであれば、酸素加湿することができます。しかし、低流量・高流量システムのどちらを使用しても、吸入気酸素濃度は50%程度が上限です。つまり、呼吸状態が不安定な時は、高流量システムで投与し、呼吸が安定したら低流量システムに変更し、換算しながら酸素濃度をさげていく。というのが適切ではないかと思います。
  • 重症の患者さんで大量の酸素が必要な時には高流量タイプにして酸素を投与したいが、高流量システムでは50%以上の濃度の酸素を投与できないのであれば、ものすごく重症な方には低流量タイプを使った方が良いのでしょうか?
    呼吸状態が安定せず、50%以上の吸入気酸素濃度が必要であれば低流量システムではありますが、リザーバーマスクへ変更します。現行では、小池メディカルから発売されている高流量システムのHI-FOネブライザー以外は、リザーバーバッグをつけなければ、高濃度の酸素が投与できません。また、リザーバーマスクを使用しても、短期間で呼吸状態の改善が認めなければ、速やかにNPPVや人工気道を用いての人工呼吸器管理を考慮し変更していく必要があります。
  • 酸素投与時の加湿について、何Lくらいからすればよろしいでしょうか。
    日本呼吸器学会の酸素療法ガイドラインでは、鼻のカニューラでは3Lくらいまでは加湿は不要と出ております。ベンチュリマスクでは酸素容量に関係なく40%くらいまでは酸素を加湿する必要はないとされています。低流量システムでは、マスクの横から空気を吸っていることも多いため、一回換気流量30L/分に対して1L~2L/分程度しか乾燥した酸素の割合はありませんので、実は酸素自体を加湿しても1/30程度しか加湿されていないので、あまり効果はないのではないかと言われ、低流量システムでは加湿の必要性はないとされる所も増えてきています。
  • 酸素流量計で10L/分以上にならないということがありますが、どうしてでしょうか。
    酸素流量計には3種類のタイプがあります。 一つは、酸素流量計の目盛りが2Lを上限としているものがあります。COPDの患者さんのように、0.1L/分刻みで使用したいような時に使います。 それ以外には恒圧式と大気圧式という2種類の酸素流量計があります。 大気圧式というのは酸素流量計の内圧が大気と同じ圧力になっていて、つまみの部位が違うだけですが、酸素が出て行く際に抵抗となり、高流量システムのデバイスを使うと抵抗があって流量計のボールが上がらないということがあります。そのため、大気圧式の流量計で使えるのは、経鼻カニューラ、フェイスマスク、リザーバー付マスクなど、低流量システムの機器となっています。 もう1つの恒圧式ですが、ボールが上がるところがノズルの下についていますので、配管に挿した時点で圧力が配管の圧力とほぼ同じ0.4MPaとなっています。大気圧よりも高い圧がかかっていますので、高流量システムの抵抗があるようなデバイスでも使用できます。恒圧式ですと、低流量システムでも高流量システムでも、どのデバイスでも使えますので、使い分けが面倒であれば恒圧式を揃えていただくのが安全です。 見分け方ですが、恒圧式のタイプのものにはメモリのゲージに0.4MPaという数字が書いてあります。また、配管の圧力と同じ圧力になっているため、流量計を配管にセットした時に、流量計のコマが一瞬浮き上がります。恒圧式計はいつも高い圧がかかっていますので、破裂の危険があり、使わない時には常にパネルから外して管理しなければなりません。 ご質問の酸素流量の設定を上げても酸素が上がらないという時は、大気圧式の酸素流量計である可能性があります。
  • 気管カニューレが突然抜けてしまった時はどのようにしたらよいでしょうか。
    気管カニューレが抜けてしまった場合、自発呼吸がない患者さんの場合、まず気管切開部を清潔なガーゼで覆い、空気が漏れないように塞いでください。それから口鼻でアンビューバッグなどを使って換気補助を行ってください。自発呼吸が十分にできる患者さんの場合は、気管切開孔の部分から酸素マスクを用いて酸素をしていただくなり、ガーゼで塞いで口鼻から供与していただくなり、対応していただければ良いと思います。 気管カニューレが抜けてしまった場合、いずれも無理に再挿入をしないことです。
  • ネブライザーについて質問です。超音波ネブライザーをマスクのサイドの孔から蛇管を接続して使うことがありますが、それについての見解はいかがでしょうか。
    結論から言えば全く効果はありません。ネブライザーをしても蒸気は肺まで届きませんし、加湿目的では全く効果ありません。気管拡張剤を投与する場合は別ですが、痰などの分泌物を柔らかくする目的でビソルボンなどを投与しても分解されて効果がなくなってしまいます。 感染リスクを増やすだけのデメリットの方が大きいですので、やめていただいた方が良いです。