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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第12回 周術期看護に活かす侵襲学(2)

杏林大学医学部付属病院
道又 元裕

ライブ研修 9月17日(水)/ オンデマンド研修 9月19日(金)〜10月3日(金)

重度の外科的侵襲などが加わった時の生体反応は、局所から全身に一連の複雑多岐な生体反応をもたらします。その反応が静寂化してきた時、生体は安定を取り戻します。しかし、過大侵襲からの回復遅延、合併症の併発などに苛まれると、急速に全身状態が悪化してしまいます。そこで、侵襲時の生体反応を踏まえた回復過程を細胞、組織レベルから理解することは、患者回復のアセスメントに必要であり、看護ケア実践の根拠になります。

(1つのテーマで9月3日と9月17日の2回に分けて細かに学びます)

発信会場:発信会場:聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市)

第12回 周術期看護に活かす侵襲学(2)

質疑応答

  • この時期は体温が熱発してくる患者さんが多いと思いますが、どのように体温コントロールすればよいのか教えて下さい。
    侵襲が加わり、炎症が惹起すると、通常は発熱してくるというのが正常ですよね。でも、発熱したいけどできない人たちというのがいます。高齢者にそのような方々がいらっしゃいます。発熱のメカニズムというのはどういうものかというと、視床下部にある体温のセットポイントが上昇して高いレベルにセットされるわけです。発熱そのものは炎症反応のひとつで正常な反応なのですが、そのときに炎症反応が起こるはずなのに起こらない、起こるべき反応ができない人たちもいるわけです。それが高齢者にはありがちで、逆に低体温になったりするかもしれません。一般的には、体温そのものは多くの人は上がるものだと考えるならば、普通は発熱というメカニズムで体温が上がっていけばいいわけです。ただ、高体温が長く続くと問題が発生してきます。40数度にもなれば生体へのダメージを生じてしまいますので、それは押さえなければなりません。ですが、たとえば38.5°が数時間続く、そのくらいは恐らく大丈夫でしょう。ただ、体温が1度上がるとエネルギー代謝が12~4%上昇するわけです。ということはそういう状態が1日~2日続いていくということは、酸素消費量の増大を招き、患者の体力は消耗してゆくことが容易に予測できます。したがって、体温は適切にコントロールをしなければなりません。

    体温コントロールの仕方ですが、発熱によって体温が上がると、骨格筋に熱産生反応としてのシバリング(戦慄)が発生し、それとともに皮膚血管収縮が起こり、放熱抑制反応が起こってきます。したがって、その状態を改善、つまりは抹消血管が拡張した状態をつくらなければならないため、末梢をクーリングしますと、熱放散そのものを抑制してしまいますので、理論的には体表面をものすごく冷やさなければならない高体温でもない限りは、薬剤でコントロールするのが最も適切です。そして、抹消は熱放散をしやすいようにすることです。結論としては、熱が出ることはおかしくはありませんが、1日も2日も異常な体温以上が続くのは生体にとっては理不尽だということです。ということで、末梢は冷たくしないということを守るべきです。

    高齢者の方々にはストレスに対して、内因性のカテコラミンが十分にレスポンスできない方がいらっしゃいます。たとえばアドレナリンをすぐに産生にできないというような方がたくさんいるわけです。ノルアドレナリンもそうです。熱を一旦上げるためには、通常のメカニズムだと末梢血管を収縮させ、その後で拡張してくるわけですが、高齢者の方々には最初から血管収縮できないので、熱放散が優位になってしまって低体温になってしまう、そういう特性を持った方がいるというのを知っておいた方が良いでしょう。
  • 炎症反応の話の中でCARSというものが出てきたのですが、抗炎症反応の方が勝る状態になるというのは、高齢者で抗炎症反応も起こせないような状態の場合、治療上で人工的に薬剤投与などを用いて抗炎症反応を高めている状態を言うのでしょうか。あるいは患者さんの状態で、そういう状況が起こるシチュエーションがあるのかお聞きしたいのですが。
    素晴らしい質問ですが、残念ながらそこはわからないのです。

    CARSという病態が先行している方というのに、共通因子が見出せていないのです。意図的に薬物で免疫力低下するとかではない場合、DNAかもしれませんし、ある何かが引き金になってCARSの状態が先行していく状況はあるのですが、どういう人たちがなるのかと精密な分類ができるわけではなく、わからないのです。