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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第14回 臨床に必要な家族ケアのスキル ―家族への危機介入―

山口大学大学院医学系研究科
山勢 博彰

ライブ研修 10月15日(水)/ オンデマンド研修 10月17日(金)〜11月7日(金)

家族看護は、実践看護領域で1つの柱となっている重要なケアです。急性期、慢性期、小児、母性、在宅など、領域を問わず様々な場面で家族ケアが必要です。ここでは、幾つかの代表的な場面を例示して、家族ケアのスキルを紹介すると共に、なぜそのケアが必要なのかを根拠を持って解説します。

発信会場:発信会場:山口大学小串キャンパス(山口県宇部市)

第14回 臨床に必要な家族ケアのスキル ―家族への危機介入―

質疑応答

  • 情緒的な対処方法から、問題解決型の対処方法へ変わっていくことが理想と思いますが、救急やICUなど急変で来られた患者様の場合、問題解決型に家族ができる間もなく、情緒的な対処方法のまま亡くなられたりすることもあります。亡くなられた後の悲嘆への影響の大きさによってグリーフワークがうまくいかないなどの違いはあるのでしょうか。
    私自身も救命をやっていましたが、問題志向的なプロセスを踏んでそのあと悲嘆のプロセスという家族というのはなかなかないと思います。やはり情緒的に振る舞っている中で、目の前での身内の死があって、そこから悲嘆のプロセスが始まるということになります。悲嘆のプロセスにうまく移行するために情緒中心のコーピングが働く時期があって、次に問題志向的なコーピング、そして悲嘆という図式は全てにおいて描けないと思います。ですから、最初の情緒的反応のまま悲嘆のプロセスに行くというのは当然あり得ることなので、それに柔軟に応じてグリーフワークができるケアが必要だと思います。

    救急では、突然亡くなってしまう家族の場合、我々はその時だけの接点で終わってしまいます。そのあとのケアというのが見られていませんでしたし、それほど重要視する考え方もなかったようです。たとえば救急ではプレホスピタルという病院前のケアは一生懸命やるのですが、ポスト-ホスピタルというのはなかなかない。そこで救急看護でも、危機的な状態にあった人たちのその後のフォローというのをどうしていくかにもう少し焦点を当てて、グリーフワークの看護師の関わり、あるいは家族の方にその後どういう風に接していく機会を持つか、そういったことをもう少し研究していった方が良いし、根拠のあるエビデンスが出していければと思っています。答えになっているかわかりませんが、その後のグリーフワークのケアというのも、焦点を当てるべきところだと感じております。
  • 危機モデルというのはいろいろあるということですが、臨床で働く時にはどのモデルを活用すればよいのでしょうか。どのモデルが臨床の場で有益に使いやすいのでしょうか。
    今日はアギュララとメズィックの危機モデルを紹介しました。もちろん皆さんは他のモデルもご存じだと思います。一番有名なのはフィンクの危機モデルと思いますが、フィンクモデルというのは時間を追ったプロセスモデルです。ショックの段階、防御的退行段階、承認の段階そして適応の段階というモデルです。このモデルは障害受容が必要な患者さん向けのモデルであって、ショック性の危機をもった方々へのプロセスモデルです。しかも脊髄損傷のケーススタディから出されているモデルですので、適用範囲は狭いです。中途障害を持つ患者さん、生涯を車椅子生活しなければならないとか寝たきりとか急激に体験している患者さんが対象です。フィンクモデルは色々なところで紹介されていますし、使われていますが、そういったことを考えると、今回紹介したアギュララのモデルをおすすめします。なぜかというと、時間プロセスモデルではないこと、ケース限定していないこと、家族にも対応できることなどです。入院患者さん以外の方でもケーススタディされています。しかも看護にとって良いのは、これがPOSのモデルだから看護過程にそのまま入っていけます。問題をアセスメントで定め、アセスメントのあり方というのをバランス保持要因のフレームでアプローチを考えていく、これがPOSの看護過程よく合うので、私はアギュララのモデルを臨床で使うのがよいと思います。
  • アギュララのお話で出たバランス保持要因ですが、それはライフステージで考えた時に、小児期、青年期、壮年期、高齢期と考え、小児期というのはバランス保持要因が必然的に低いと考えてよろしいのでしょうか。
    その時期はサポートシステムが強い時期でもあります。親御さんもいますし、周りの方も手をさしのべる状況があります。しかし、現実を認識する能力はやはり成人よりも不十分ですし、自分の対処機制も、これは経験から後天的にいろいろな対処を身につけていくものですから、やはり発達段階にある子どもというのは対処機制をそんなに持っているわけではありません。ですから出来事の知覚と対処機制のバランス保持要因に関して言えば、成人に比べて低いかと思います。
  • 心肺蘇生のガイドラインについて、最近は心肺蘇生処置中の家族の面会を推奨していると聞きます。それはどういうことでしょうか。
    2005年版の救急蘇生のガイドラインでは、蘇生現場に立ち会うかどうかどうかを家族に聞く機会を与える必要があると書かれています。
    家族がもし蘇生中に来院した場合、シャットアウトして何も状況をわからないままにするのではなく、家族がしっかり蘇生治療されている姿を確認したいならば見せてあげるし、逆に家族が見たくないと拒否するのならば無理強いしないということになります。

    しかしこれは欧米のデータですので、日本ではデータがなく、サーベイされていません。現在、研究プロジェクトを組んで医療者に対しての調査、家族に対する調査をしておりますので、日本人の心情を踏まえた蘇生現場のあり方などを後々提供していきたいと思います。
  • 複雑性の悲嘆というのはどういうことでしょうか。
    これは病的悲嘆といわれていたものですが、悲嘆症状が長期化して、一定の症状、行動障害などが出てきた場合、複雑性悲嘆と診断的には言っているようです。しっかりした悲嘆作業をして、悲嘆のプロセスをとっていけば、後々長期化していくことはないのですが、それがうまくできないと悲嘆反応が長期化して固定化いくような、病的な症状になってしまうということです。それを病的な悲嘆、複雑性悲嘆と呼んでいます。