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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第18回 せん妄患者のケア

りんくう総合医療センター市立泉佐野病院
北村 愛子

ライブ研修 12月17日(水)/ オンデマンド研修 12月19日(金)〜1月9日(金)

今回は、看護実践の中でも複雑な事象である『せん妄』について、『患者の生活の質(QOL)を高める医療を実現する視点』でケアすることの重要性について述べたいと思います。特に「せん妄」は、患者・家族にとって苦痛で、身体の危険信号であることからケアが必要となります。本講演では、せん妄の発生要因と発症リスクのアセスメント、せん妄発生予防と発症時の看護について述べ、さらにリスクや倫理的側面を検討し、医療チームの協働の必要性についても学習を勧めたいと思います。

発信会場:発信会場:市立泉佐野病院(大阪府泉佐野市)

第18回 せん妄患者のケア

質疑応答

  • せん妄の臨床的特徴として、低活動の場合は鬱症状を呈すると教えていただきましたが、このような患者さんは明らかな精神症状として見なされにくいと思います。早期発見のためにも、安定した状態との明確な区別を教えてください。
    長い経験から言えば、どちらかといえば過活動の人の方が多くみられます。なぜかというと、カテコラミンが分泌されるからです。低活動の方はこれまで三例しか経験しておりませんが、その方たちの特徴としては覚醒の遅延があったということです。麻酔などの生体侵襲が後からも覚醒の遅延がある場合、私たちはせん妄という概念よりも、意識が戻らない点を覚醒遅延の判断としてしまいます。しかし、患者さんの状態をよく観察していると、鬱の状態になっていた、低活動のせん妄だという判断ができました。事前に低活動で鬱状態のせん妄とはどういう症状があるのかといえば、その三例に共通したことは覚醒遅延があったということです。薬を切っても目が覚めませんし、同時に頭の中に脳梗塞か何かがあるのではないかとCTを撮ってみても異常は見られない。そのような後にゆっくり目が覚めてきた患者様には鬱状態があり、低活動のせん妄だと判断することができました。重症度のレベルが高い例ですが、覚醒が緩やかであるという特徴があると言えます。
  • 鎮静剤などの薬剤の使用とか、ラインとかチューブ類の抜去などは医師の理解が必要ですが、最初から医師の協力はスムーズに得られるものでしょうか。
    臨床では先生はまだ置いておいて欲しいとおっしゃる方が多いのでしょうか? 少なくとも身体にとっていらないものを早く取るという感覚というのは、おそらく医師も前提として持っていらっしゃると思います。ただ、どこが一番早い時期なのかという見方が違うのだと思います。医師は細胞や臓器に働きかける仕事ですので、まだもう少し置いておいて欲しいと思われるのかもしれません。私たちは日常生活や患者様の反応に責任をもっていますので、見ていると、もうこんなに苦しんでいるのだからもういいのではと思い、相手の苦痛に着眼します。そこが相容れず話がぴったり合わない時に、物の見方と重要度が違うと発想を変えて、うまく行かない時は、先生はどのような状態になればチューブ類を抜くことができると判断しているのか、私たちが苦痛の緩和や安全を守りきることができるかということをポイントに協議すれば良いと思います。最初から理解が得られるか否かということよりは、より一層早く抜くために、どの点を重要なポイントとして話し合うかが大切だと思います。そのアセスメントを真剣に双方が語り合わないと事故抜去が起きたりしますので、医師と共に協議するということがとても大事です。
  • 観察項目の中で検査データという項目がありましたが、ICU等ではほぼAラインが入っていますので、Aラインから採血することなど頻繁にありますが、検査データのアセスメントの仕方をもう少し詳しく教えてください。
    テキストに生体侵襲のスライドがあったと思いますが、手術の後など体の中で侵襲が起き、細胞がつぶれて体中が悲鳴をあげている時は、外側ではこのようなデータが出ています。このデータは生体の侵襲の程度を表していると思ってください。たとえば腎臓であってもBUNやクレアチニンがとても高値に指し示されていれば、やはりどう整えようと思っても排泄物が出て行かないし、電解質のバランスが取れていない、また、神経や内分泌等への影響がとても高いことが血糖値や血圧に現れます。酸素というのも重要なポイントとなります。各組織細胞に十分な酸素が提供されないと生体侵襲が立ち上がってきませんので、そういった意味において、血液ガスにはPO2が載っていますし、アシドーシスが確認することができます。また、貧血などはヘモグロビンに出ていますが、血液ガスにはヘモグロビンがデータ化されていると思います。酸素の量が細胞を戻すのに適切な量かというのも判断できます。
    身体的側面を整えることによって、十分な水分・電解質のバランス、十分な老廃物が外に出て行く状況であれば、どんなに傷害があっても身体は戻っていく、身体が楽になっていけば混乱がなくなり気持ちも楽になり、せん妄を起こさずにすみます。DSNのDの項目の生体の侵襲が生理学的所見で明らかになっているのか、というのがここに値します。それらがなくなってくるとせん妄の診断基準も同時になくなってきます。細かく学習するならば、生体侵襲理論等を学習していき、血液のデータと侵襲の度合いがわかると思います。