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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第21回 患者の声にならない訴えを看る~トータルアセスメント

杏林大学医学部付属病院 看護部長
道又 元裕 氏

フィジカルアセスメント(シリーズ) STAGE1〜2

ライブ研修 2月8日(水)/ オンデマンド研修 2月13日(月)〜3月13日(月)

急性期医療の対象となる患者の中には、過大な侵襲を受け、何も対応しなければ生命の危機的状態に陥ることも稀ではありません。刻一刻と変化する患者の全身状態を捉え,新たな侵襲の到来を未然に防ぎ、また、その影響を最小限にすることが大切です。そこで、必要となるのがシビアな状態の中での患者変化を捉える「ちから」になります。そのちからこそが、全身状態を見極める、いわゆるトータルアセスメントです。侵襲が患者に与える影響とそれらから恒常性を維持しようとする患者の状態を理解しましょう。

発信会場:発信会場:横須賀市立うわまち病院(神奈川県横須賀市)

第21回 患者の声にならない訴えを看る~トータルアセスメント

質疑応答

  • フィジカルアセスメントに対して、講義で説明がありましたように科学的根拠のエビデンスや解説書などで知識の補充をして臨床推論を進めていくことは、これからメンバーで続けていけると思うのですが、メンバー同士で患者様の想いも臨床推論に絡めてケアにつなげていきたいと考えています。患者様の想いや患者様を中心にしたケアを進めていくにあたり、何か気をつけていく点などあれば教えていただきたいです。
    患者への想いというのはよく聞く言葉です。その想いとは何でしょうか。それは、おそらくは患者の認識、意志、価値観などを含む言葉だと思われます。そのようなことをケアの対象にしていくということは、もちろん当然のことです。しかし、現実的にはそれらを抽出するのは非常に難しいことです。何故なら、それは患者がそれらを本当に表現できているいるかどうかということが明らかではないこともあります。したがって、こちらがそれを推察していくということがとても重要となってきます。これには帰納法を用いていくことで、むしろそれに頼らざるを得ないかも知れません。患者の判断、価値、意志、認識、理解度などをこれまで経験した事象の積み重ねから推量していくということです。 しかし、それでもやはり分からないことがたくさんあります。例えば、患者の痛みを理解して寄り添うという言葉をよく聞きますが、実際にそれを理解することは現時点ではとても難しいことです。だからこそ、患者が今どんな表情をしているか、どんな発言をしたのか、どんなニーズがあるのか、といったことを判断しながら、これまでの蓄積された事象と照らし合わせながら、現在の対象とする患者の心理状況、ニーズを判断をしていくしかないと思います。 補足になりますが、よく聞く「想い」という言葉で、すべてを一括りにしないということです。想いということをどれだけ細かく丁寧に分析していくかどうかということが必要であり、大切なことです。患者様の認識だけではなく、意図的あるいは無意識に発する動き(パフォーマンス、仕草)も想いの対象です。もしかすると、時には私たちにとっては、とてもあるいは些か奇異な行動があるかもしれませんし、表情一つとってみても、痛いのに痛いと発することがないこともありますし、痛くないのに痛いと受け取れるパフォーマンスをする場合もあるかも知れません。また、痛いのをじっと我慢していることもあります。さらに、疾病構造上において身体は痛いはずなのに、大脳ではそれを痛いと判断していなかったりすることも多くあります。それは、身体機能の不調和から発している想いということも十分にあり得ます。したがって、これまで述べましたように、日々の事例を積み上げを意識して、様々な細かな共通点を分析、見出していくことがとても大事になってくると思います。想いを一括りにせず、想いを構成している下位レベルの背景因子を焦点化する推論作業を意図的にしていくことをお薦めします。