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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第13回 最新呼吸療法のエッセンスシリーズ 〜気管吸引と気道ケア(吸引以外の排痰法、カフ圧管理)

秋田大学医学部附属病院 集中ケア認定看護師
菅広信 氏

呼吸管理(シリーズ) STAGE1〜2

ライブ研修 10月7日(水)/ オンデマンド研修 10月13日(火)〜11月10日(火)

気管吸引は看護師が誰もが行うことがある一般的な処置と言えます。しかし、患者さんに侵襲を与える行為でもあり、良かれと思っておこなった行為も間違った方法では逆に侵襲を与えることになりかねません。目の前の「痰を取る」ことに熱心になり、本当の気管吸引の目的である「気道のクリアランスの維持」を忘れてしまうことはないでしょうか? たかが気管吸引とは思わずに、基本的なポイントから説明していければと思います。
また、人工呼吸器使用中の患者は適切なカフ圧の管理が必須ですが,以外と知られていないこともあります。例えば、圧はどのくらいにし、いつ調整するのか? ちょっとしたコツも含めて確認していきたいと思っています。

発信会場:発信会場:秋田赤十字病院(秋田県秋田市)

第13回 最新呼吸療法のエッセンスシリーズ 〜気管吸引と気道ケア(吸引以外の排痰法、カフ圧管理)

質疑応答

  • 認知機能障害のある肺炎の患者さんで、痰が絡んでいるので吸引しようとし、まず鼻よりも先に口から取ろうと思い口腔吸引をしようとしたのですが、歯が立派で噛み切られてしまいました。ちぎったチューブの先は舌で出してくれたのですが、その後、鼻からもやってみたのですが、やはり拒否が強く今度は鼻出血をしてしまいました。このような場合の上手な吸引のアドバイスがありましたら教えて頂きたいと思います。
    臨床でよくある問題です。経鼻吸引を行ったら、鼻出血を起してしまった、でも痰はあるので取っておきたいというケースは私も経験したことがあります。講義の中で鼻からの吸引はよく考えてから行った方がいいですよとお話をしました。ただ、どうしてもやらなければならない時とはそういった時なのかも知れません。  私がここで考える方法が2つあります。しかし、その方法に根拠があるかどうかは分かりませんが、ご紹介いたします。1つはバイトブロックを噛ませて行うという方法です。ただし、苦しいために患者さんは嫌がりますし、倫理的に問題がありそうですので、あまり良い方法ではないかも知れません。2つ目の方法として、気管支鏡による痰の吸引も考えられます。もしかしたら、施設によってはできないかもしれませんが検討する余地はあるかと思います。  また、本人に認知機能の低下があるということなので、痰を出せないということであっても、もう1度、患者さんの水分バランスや部屋の湿度、体位変換などのタイミングを考えていただいて、介入できるところがあれば、何か身体を動かした際などに咳で排痰してくれないかということも考えたりします。その場合でも、絶対有効ですとは言えませんし、判断が難しいところです。いずれカンファレンスを設け、その患者さんにとって痰がもたらす悪影響も含めて医師と相談するのが良いと思います。
  • 閉鎖式の気管吸引は当院でもよく使うのですが、なかなか痰が取りきれず結局普通の吸引に戻してしまうケースもあります。SpO2が結構高めの患者さんの場合、普通の吸引に戻していいものかどうか悩む時もあるのですが、そういったSpO2が高くて閉鎖式の気管吸引を使ってもなかなか痰が取れないという場合は、すぐ医師に気管支鏡を依頼した方がいいのでしょうか。また、先生の施設でも初めは閉鎖式の気管吸引を使っていて、結局普通の吸引に戻したケースはありますか?
    まず1つ目についてですが、まずはその痰が本当に悪さをしているのかどうかというところですよね。その痰によって、患者さんが明らかに窒息してしまうとか、人工呼吸器からの離脱が遅くなってしまうなど、何か悪いことがあるとすれば開放式で取るということも考慮する必要があると思います。ただ、これも医療の天秤の話になりますが、「SpO2を低下させないことや肺胞を虚脱させない」ということを目的とするのか、「悪影響を与えているらしい痰を取ること」を目的とするのか判断に迷うことがあります。その判断が難しいと思った時には、気管支鏡による吸引ができる施設であるのならば、医師と相談ということになると思います。  当院の場合は、「すぐに気管支鏡による吸引を相談しよう」とは考えず、「痰が悪影響を与えている」と判断した際は開放式吸引を行う事もあります。開放式吸引を行ってみても痰が吸引できす、胸部レントゲンにより所見を確認したところ、肺の陰影が強くなっており、いわゆる「真っ白」になっていたことがありました。さらにそれで気管吸引を繰り返しても、おそらく明らかな改善は見られないでしょう。また、講義でお話ししましたが、気管吸引の弊害が出現する場合、この症例では吸引による不整脈が出現していましたが、その場合は気管支鏡による吸引の出番だと思います。  2つめの質問ですが、医師としても看護師としてもこれは明らかに痰の量が吸引できていないという事がありました。医師によっては、「痰がとれないから自分が主治医の患者には閉鎖式を付けないで欲しい」と言われたこともあります。質問のように、後ほど開放式に戻したということもあります。これは私見ですが、PEEPが5cmH2Oくらいでしたら、明らかにPEEPが虚脱を防いでいるという効果が見えない、また医師が閉鎖式のメリットが感じられないというのであれば、開放式に戻してしまってもそれは仕方がないのではないかと思います。一度使用した物を外すことはコスト面で残念です。しかし、閉鎖式と開放式による気管吸引の判断を臨機応変にし、チームとして意思疎通を図って、「この症例では閉鎖式は良くない」ということになれば、閉鎖式を使用しないということも必要だと思います。患者さんにメリットがあることを常に柔軟に考えて、手段をいくつも持っているという状況を作ることが重要だと思うのです。よって、医療の天秤でメリットが勝ったときには、閉鎖式を使用していても解放式で吸引しても良いと考えています。