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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第18回 患者の声にならない訴えを看る~消化器系症状

河北総合病院 急性・重症患者看護専門看護師
後藤 順一 氏

STAGE1〜4

ライブ研修 12月17日(水)/ オンデマンド研修 12月22日(月)〜1月19日(月)

医療の現場において患者は常に正確な情報を言葉として伝えてくれるとは限りません。しかし看護師は患者の正確な情報を収集しアセスメントする必要があります。そのために用いられる方法がフィジカルアセスメントです。フィジカルアセスメントは5感のなかの視覚、聴覚、触覚、嗅覚などを生かして、それらの情報を統合し患者の状態を判断することです。ここでは消化器系症状のメカニズムからフィジカルアセスメントの基本を確認して、今後の現場や教育活動として役立てて下さい。

発信会場:発信会場:長崎県五島中央病院(長崎県五島市)

第18回 患者の声にならない訴えを看る~消化器系症状

質疑応答

  • しゃっくりの止め方について教えてください。
    しゃっくり(吃逆)が横隔膜の瞬間的な痙攣というのはみなさんご存知と思いますが、これを取るのはなかなか難しいです。ひとつの方法としては、思い切り深呼吸をして横隔膜をパンパンに張り、その状態で息を止めていただいて、横隔膜が張った状態からゆっくり吐いてもらう。要は横隔膜に圧を加えるという方法があります。しかし、しゃっくりが一時的に起こったものか、それとも病的な要因により続くものなのかという観察が重要になってきます。しゃっくりが横隔膜の炎症として起こる場合があります。この場合には横隔膜に隣接している臓器の炎症が横隔膜まで波及していることもありますので、フィジカルイグザミネーションで肝臓、脾臓の叩打診を行って炎症所見を確認することも必要です。たかがしゃっくりですが、フィジカルアセスメントを採り入れればこのような観察項目が出てくると思います。
  • 食事再開後に起きた腹痛の判断について教えてください。
    講義中、腹痛の主な要因は内臓痛、体性痛、関連痛の3つに分類できると話しました。食事を摂取した後に起きた痛みと聞いて頭に浮かぶのは、消化液が痛みに関与しているのではないかとか、胆管系の障害があるのではないかとか予測されると思います。まずはどのような痛みなのか、痛みの性状をフィジカルアセスメントで確認することが重要となってきます。痛みが臓器に由来する痛みなのか、胃が拡張しているかというのは打診で判断できますし、触診でお腹の張り、筋性防御などで腹膜の炎症などが確認できますし、食事後の痛みというところから徐々にフィジカルアセスメントで観察して判断していくというのが重要だと思います。
  • イレウスを起こした場合、メタル音がしたり反響音が聞こえたりするんですが、どういったメカニズムでメタル音がするのか教えてください。
    メタル音(金属音)は腸管が狭窄しているところを液体が通過する時に発生すると言われていて、カチカチとかカタカタ、キンキンといった感じの音がします。イメージがつきにくいかもしれませんが、狭いところを無理に腸の内容物が通過することで音は発生し、イレウスの典型的な音のひとつです。打診してどこで狭窄してどこでメタル音が発生したかを判断します。あとは揺すってみて振水音がチャプチャプしたらイレウスを疑わせる所見として正しい所見だと思います。質問の回答としましては、メタル音は狭窄している部位を通過する音と判断していただければ良いです。
  • 腹水がたまっている場合に打診をすると、腹水が振動とともに内臓に伝わってダメージを与える場合があるので、無理をしなくてよいと指導を受けたことがあるのですが、打診をして良い場合としない方が良い状況の判断基準はありますか?
    打診における侵襲の判断ですが、その前にフィジカルイグザミネーションの順番は、視診、聴診、触診、打診の順が重要なポイントになります。要は患者さんへの侵襲が少ない順に観察し、フィジカルイグザミネーションを行うということです。視診は目で見て観察するだけですから全く支障はありません。次に聴診は音を聴いているだけですので侵襲は少ないです。次に触診をして最後に打診という、侵襲の低いものから高い観察へと順番でフィジカルイグザミネーションを行うことが大切です。もしも触診で腫瘤なり動脈性の拍動が確認できた時には、大動脈瘤のおそれがありますので、無理に打診を行い強い衝撃を与えると破裂する恐れがありますので、行うべきではありません。ただ、通常は臓器に打診を行っても、臓器に障害を与えるほどの強い侵襲はありません。まずは侵襲の少ない順番にフィジカルイグザミネーションを行いましょう。いきなり強く叩くと腸管の動きにも影響を与えてしまいますから、その順番だけは注意していただければと思います。