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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第12回 最新の不整脈治療

榊原記念病院内科部長
梅村 純

ライブ研修 9月16日(水)/ オンデマンド研修 9月18日(金)〜10月9日(金)

不整脈に対する治療法は 1.薬物療法 2.カテーテル心筋焼灼術(アブレーション) 3.ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD) があげられる。1では心房細動に対して適応が拡大されたクラスIII群薬が注目される。2では発作性心房細動に対する経験も増加し、慢性心房細動においても施行され始めている。3に関しては心不全を合併した症例における心室再同期療法(CRT)との併用が広く行われるようになった。今回はこれら最新治療につき概説する。

発信会場:発信会場:榊原記念病院(東京都府中市)

第12回 最新の不整脈治療

質疑応答

  • 洞機能不全症候群のペースメーカーの適応はどうなっていますでしょうか。
    最近ではホルター心電図を開業医の先生もよくなさっていますが、記録をみると夜中にRR間隔が3秒以上延長する例は多々あり、我々の病院をご紹介いただくこともあります。ペースメーカーの適用では、RR間隔が3秒から5秒以上延長し、しかもご自身のめまいや失神などの症状と一致する関連が深いということが確かめられれば、ペースメーカーが必要と判断します。資料の洞機能不全のEPSでも、EPSで実際に自己リズムが何秒くらい出てこないかを確認して、症状と見比べて適応を決めます。何秒あったから必ず入れなければならないとか、何秒だったからこれは危険だとか、必ずしも言えません。
  • 心房細動に対するカテーテルアブレーションの成功率はどのくらいでしょうか?
    難しい問題ですが、正直な先生は60%から1回目では70%と言う方が多いと思います。カテーテルアブレーションは再発のリスクがあって、30%近く再発するので、1回目でうまくいくとは、どこの施設でもあまり説明はしていないと思います。2回目をやることによって、完全に治療ができたとして80~90%ということになると思います。カテーテルアブレーションは他の上室性頻拍が出現することもあり、脳血栓などの合併症を生じることもあり得るので、やはりそういうことをお話した上で、成功率についても説明してほしいと思います。
  • CRTは全ての患者さんに対して有効なのでしょうか。
    全ての患者さんに有効なCRTができるというのは我々の願いです。元々QRSの幅の広い、特に左脚ブロックの症例には有効だろうと言われていますが、その中でも30%くらいに無効例があります。最も有効とされているのは左心室の中隔側と自由壁の間で、収縮にタイムラグがあって、効率が悪い場合です。それを判定するには心エコーの組織ドップラーや、あるいは違う方法を用いて、適応のある症例を決めていくということにしていますが、現時点ではまだまだ難しい問題があります。
  • AED自動体外式除細動器が巷に溢れていますが、これさえ使えば意識のない人は助かるのでしょうか。
    VFがあってAEDが作動し、VFの停止後に心停止したままの方も多いわけです。AEDは作動後に再解析をしますので、再解析をして除細動の適応がありませんと言われた時に、倒れている方の意識をみて、脈に触れて、意識がなければCPR(心肺蘇生)が必要です。心臓マッサージを開始してください。AEDさえあればいいというわけではありません。
  • カルトとエンサイトはどう違うのでしょうか。
    2つ持っている施設は患者さんによって選んで使うと思うのですが、エンサイトは、頻拍が短時間しか持続しない場合に有効です。カルトというのは頻拍が、右心房なら右心房、左心房なら左心房に絵を描いて行く間にずっと持続いていないと、解析ができません。また、カルトはアブレーション用のカテーテルでできますが、エンサイトは大きなバルーンが入りますので、アブレーションをするときにバルーンが邪魔をしてなかなかいいところに行かないということがありますので、なるべく症例で使い分けをした方が良いでしょう。
  • カテーテルアブレーションが終わった後に起きやすい合併症について、病棟のナースがどのような点に注意し観察したらよいか教えて下さい。
    最近は合併症の発生率は非常に低くなっていますが、心房細動のアブレーションが多くなってきますと、血栓の問題があります、特に小さな血栓、例えば目が見えにくくなったとか物が二重に見えるとか、頭痛があるなどの訴えに注意をしてください。それからPCIなど最近のカテーテルなどは手から行う例が多いですが、カテーテルアブレーションの場合は足からやりますので、またカテーテルは太いものを使用しますので、出血や、末梢の閉塞なども気をつけてください。
  • ペースメーカー、ICD、CRTなどは術後に注意しなければならないことはどんなことがあるでしょうか。
    いずれもリードという電線が入りますので、それが移動してしまうディスロッジが起こり、それによってペーシング不全が出てしまうことがあります。モニター上のペースメーカー心電図をよく理解して、違う心電図が出たらこれはおかしいと、担当医師に報告していただければと思います。
  • VTの薬物療法でマグネシウムは最近あまり使われないのでしょうか。
    マグネシウムを使わないわけではありません。キシロカインが効かない場合にマグネシウムを使って有効なこともあります。ただ、最近ではキシロカインではなくシンビットやアンカロンの静注薬を使うケースが増えています。
  • AEDの種類はほとんど二相性になっていると聞きますが、通常の除細動器は単相性が多いのでしょうか。それとも二相性の方が普及しているのでしょうか。
    ICDとAEDに関しては完全に二相性になっています。体外式の除細動器の古い物に関してはまだ単相性もありますが、二相性の方が少ないエネルギーで除細動効果が大きいとされています。施設でお使いになっているものが単相性か二相性かは確認されておいた方が良いと思います。通常の心室頻拍ですと、単相性だと200ジュール以上を使用します。心房細動の場合ですと100~150ジュールくらいで使用しますが、それはあくまでも単相性での場合のエネルギーですから、二相性ですとその75%くらいのエネルギーで十分となっていますので、各々の施設の除細動器のマニュアルをご覧になったり、担当者に確認してください。