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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第15回 チーム医療を円滑に実践するために

昭和大学医学部救急医学講座主任教授
有賀 徹

ライブ研修 11月4日(水)/ オンデマンド研修 11月9日(月)〜11月30日(月)

病院では安全で安心な医療を提供するために、例えば説明と納得の過程を経て、医学的、倫理的に正しい医療を進めていくこととなる。そのためには、ほぼすべての場合において多くの職種が互いに関与することが求められる。つまり、このような医療はチームとして展開するということである。このことを円滑に行う基本は、患者と医療者らとは同じ目的に向かって協働しているという考え方を確認し、病院組織として実践することである。

発信会場:発信会場:杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)

第15回 チーム医療を円滑に実践するために

質疑応答

  • 呼吸器ケアチームの一員として働いております。呼吸器ケアチームでラウンドに回って、例えば人工呼吸器の設定がこれでは少しおかしいのではないかと、カルテにその旨を記載して残していますが、翌週行っても変わっておらず、オーダーは主治医がするので設定が変わらないままということが多々あります。チームとしての権限の獲得とか、意見を反映していくために、どのようにしていけばよいでしょうか。
    その病院にもし私がいたら直接個別に話ができると思いますが、一般論として言えばどこの世界にもあるわけです。例えば昭和大学病院では抗痙攣剤や色々な薬の血中濃度を主治医が測ります。血液を採って結果が来ます。その結果について、今は薬剤師がカルテに直接書き込んでコメントを入れてしまってくださいとし、そのコメントを見て主治医がどうするかはまた次の週に見ようじゃないかとしています。ご質問の話で行きますと、ボトムアップとトップダウンの上手なシンクロの状態ができていません。下は下で考えながら、呼吸器ケアのチームの一員の専門家として主治医に上げるわけです。主治医はそれを見てどうするか、場合によっては見ていない可能性もあります。個別に行けば何がどうかと話をすることができるというのはそういうことです。ただ、一般的な話をすれば、そもそもトップダウンとして呼吸器のチームを病院の中で走らせるというのは病院が決めていることですから、病院がそのチームに対してそれなりの役割を与えているはずです。そういう意味では組織決定をした段階で、各ドクターなり各部署がどのような形でどう利用するか、トップダウンで話を下ろしておかなければいけません。ただふらっと来てレスピレーターについて意見を書いて出て行った、としても主治医は主治医の考えがあるわけですから、例えばpeepをもっと上げろとか書かれても、場合によっては圧外傷の可能性がある時に、レスピレーターのセッティングは変えられないかもしれません。そういう意味でいえば、言ってきたことに対してどういう風にレスポンスするかというのも、トップダウンあるいはボトムアップの中で議論が必要です。どういう風にすれば良いでしょうかというのはきわめて個別的な話ですが、一般論からして考えると、トップダウンとボトムアップのシンクロを良くするということが重要になります。
  • 私の病院では褥瘡対策チーム、栄養サポートチーム、呼吸器ケアチームというチームがあるのですが、依頼は主治医のオーダーを必要とするケースが多く、チーム同士の横の連携というのがうまく行われていません。昭和大学病院ではチームの横の連絡、連携をどういう風に行っていらっしゃるか、教えて下さい。
    各チームが目的を持って活動しているのであれば、必要であれば横の連携はするべきですよね。褥瘡のチームからすれば栄養をこれからどうするかというのは極めて重要です。本来目的を達するためには、必然的に周辺に関係する人たちにアクセスをしなければなりません。蘇生室や救急外来など、急性期になればなるほど主治医の実効的な支配が大きいですが、時間が経つにつれて医師の指示のもとにと言いながらも、慢性期になれば医師の支配は薄くなって来ます。例えばウィニングの前に栄養サポートチームに何とかしてもらわなければいけないと思う呼吸器ケアチームがいれば、こういう時期だからこそやらなければいけないと、主治医に伝えるなり周辺の人たちに伝えます。それは本来目的をどう達するかに直結する話ですから、主治医が聞くことができないというのであれば、それなりの理由をカンファレンスして問いたださなければなりません。場合によってはチームリーダーが主治医とどういう形で議論をするか、作戦を立てなければなりません。医療安全を例にしますが、問題となる現場へ出向いてあなたたちはダサいと指摘しながら人間関係を崩さないというのが、医療安全の現場に飛んでいくチームの仕事です。本来目的は、あなたたちはダメだと言うことではなく、患者さんの安全をどう確保するのか、医療チーム全体としてどう向上するべきかですから、人間関係を崩してはどうにもなりません。本来目的をどう設定しているか、それに対してどう忠実かということで議論するべきだと思います。昭和大学病院は極めて普通の病院ですから、トップダウンもボトムアップも来ます。ボトムアップがあればあるほど、病院当局はトップダウンのイニシアティブも発揮しなければなりません。言うことをきかない医者はいっぱいいますが、場合によっては院長室で話をすることになります。ここら辺は各病院のケースによって十二分に議論の価値があると思います。