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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第21回 医療における患者からの暴言・暴力等への対応

尾道市立市民病院 副院長/看護部長
山田 佐登美

ライブ研修 2月2日(水)/ オンデマンド研修 2月7日(月)〜2月28日(月)

最近、医療者の専門性に対する患者や一般市民の信頼或いは尊敬の念が低下している。医療現場では、職員への暴言・身体暴力・セクハラが増加しており、看護職だけでなく、医師等の疲弊や離職の一因にもなっている。この問題は、労働環境を改善するという視点から、組織的に取り組むことが重要である。いかなる暴力も容認しないという強い意思をもって、予防も含めた対策を講じながら新たな医療者-患者の信頼関係を築いていかなければならない。その考え方と具体的な取り組みを紹介する。

発信会場:発信会場:榊原記念病院(東京都府中市)

第21回 医療における患者からの暴言・暴力等への対応

質疑応答

  • 先生が医療安全に対するポイントと考えていることを教えて下さい。できれば気に入っている標語などありましたらよろしくお願いします。
    苦情もひとつのリスクマネジメントですが、ポイントとすればコミュニケーション、それに尽きると思います。職員間、患者との関係など全て、言語的なコミュニケーションに限らず、コミュニケーションです。標語は、講義中にお話した「患者との信頼を再構築するための3つのR(Respect、Relation、Refresh)」もそうですが、「3つのC」というのもあります。コミュニケーション、コラボレーション、コミット(Communication、Collaboration、Commit)です。
  • セクハラの調査をしたところ、対応策は無視が多くて相談自体が少ないということだったのですが、相談しづらい、報告しにくいこととは思いますが、それを報告しやすい体制作りをするにはどうしたら良いでしょうか。
    一回否定されるとそれをもう言いたくなくなるというのが人間ですので、それを師長や仲間同士でモニタリングし合う、何が起こっているのか気に掛け合う、声をかけるなどして、そういったことがあれば皆で考え、積み重ねていかないとなかなか相談体制というのはできません。だからこそ病院の方針が大事です。日頃から職員を守るということを大事にし、きちんとしていく病院の姿勢を伝えていなければ、辞めればいいということになってしまいます。こんな病院辞めてしまって、他の所で勤めれば良いというように、逃げ場を求めるように追いやってしまいます。組織的に取り組まなければならない大事なところです。
  • 高齢者が増えて、中には認知症を持っていらっしゃる患者さんも非常に多いですが、当院は循環器ですので、急性期に循環不全を起こされている患者さんがシンドローム傾向になったりします。認知症の患者さんが暴力的な対応をされるとか、暴言を吐かれる際に、病気のせいでのことと思って我慢しがちです。そういった認知症を持っている患者さんの暴力的な行為に対して、何か良いアドバイスをお願いします。
    まず、認知症とか精神障害とかせん妄の方は、暴力が起こるリスクが高いと意識することが大事です。転倒転落と同じです。転倒転落のリスクが高い患者さんには予防策を考えますが、それと同様に、認知症で特に攻撃性の強い認知症の方の場合、入院の際にまず家ではどうだったのか、家族に対してどういう行動を取っていたか、必ず確認します。そしてリスクが高ければこちらも1人で対応しないようにします。看護師の雇用が難しい病院では大変ですが、複数で対応するということで、例えば夜勤は、3人体制を組むようにします。ただ、抑制をすれば良いというわけではなく、1人が少し離れた所に立ち、何かあったときはすぐに仲間を呼べるようにするなど、複数で対応する工夫をします。また、家族に対して、入院してからこういう傾向にあると説明することも大事です。家ではそんなこと起こらなかったのに、病院でなぜそういうことになるのかと、家族が医療者に対して、患者さんに不適切な対応をしているのではないかと思ったりしますので、そういう意味では家族も巻き込むことです。100%防げるわけではありませんが、できることだと思います。
  • 暴言等の対策で、先生の施設で取り組まれている職員の勉強会や啓発の活動などがありましたら教えて下さい。
    取り組みを始めた当初は、ゼネラルリスクマネジャーが中心となって医療安全対策として説明会やマニュアルづくりをし、先ほど話したロールプレイングなどをやりましたが、もう1つはコール体制というのを取っていて、とにかく現場で解決しようと思わないようにし、まずコールをして起こっていることを伝えるということを徹底しました。私たち管理者もラウンドして、こういう患者さんがいると聞くと、1度その患者さんとお話をしてみましょうかということにし、とにかく組織として「応えてくれる組織」の体制を作ることが、職員にとっては相談しやすかったり、教育、啓発になっていきます。起こっていることについて一緒に関われば、その対応を見て、職員にとっても学習になります。こういう風にすれば良いのかという気づきや体験が積み重ねられて、結局自分たちの身を守るスキルの成長に繋がっていくので、事例、事例をオープンにし、ゼネラルリスクマネジャーが文書にまとめ、月1回のリスクマネジメント会議で紹介をしています。こんな苦情の対応をした、暴力があってこのように対応して、こう解決ができた、解決ができずにまだ続いているとか、全て報告をし、また現場へフィードバックしています。