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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第10回 最新のケア技術(2)(気道ケア)  吸引・排痰法 痰を出せる技術根拠

前橋赤十字病院 救急看護認定看護師
小池 伸享

ライブ研修 8月17日(水)/ オンデマンド研修 8月22日(月)〜9月12日(月)

人工呼吸器を装着した患者さんへ質の高い気道ケアを実践していくためには、多くの知識と技術が必要です。ですが、臨床では実践していく上で根拠に基づかないケアや不明瞭な点など多々あるのではないかと思われます。ここでは、根拠に基づいた気道ケアについて概説します。気道ケアを今回のセミナーを機会に再度振り返ってみましょう。

発信会場:会場:美原記念病院(群馬県伊勢崎市)

第10回 最新のケア技術(2)(気道ケア)  吸引・排痰法 痰を出せる技術根拠

質疑応答

  • 吸引時間10秒を守るために、接続部分がどうしても気管に入りづらい方など、ヒットしたら接続部分を外して10秒進んだからちょっと外してちょっと待って、また繋げて引くということを時々見かけてしまいます。そういったことで起こるリスクについて教えていただきたいと思います。
    そういった行為は当院でも見られます。まず考えなければならないのは患者さんの苦痛だったり、酸素化ということも考えなければなりません。吸引チューブが気管内に留置されているということは、声門は開いているわけですし、咳嗽反射から咳嗽することによって誤嚥のリスクがあったりします。誤嚥性肺炎のリスクを考えると非常に危険な行為だと思います。臨床上、ほんとうに入りづらい患者さんがいるのは確かです。現場では仕方ないという場面もあるかとは思いますが、患者さんの安全という面で考えると、我々看護師には安全義務、危険予知義務があります。そういう意味で考えると、やはり推奨できる手技ではないと思います。
  • かつては吸引をするときに、鼻腔をやって、口腔をやって、両方やりなさいと盛んに指導されました。最近は鼻腔吸引はあまり奨励されていないと聞きますが、そのあたりの事情を伺いたいと思います。
    鼻腔の吸引については色々な参考書に様々な見解が書かれていると思います。先ほどVAPの話をさせていただきましたが、外気から吸入させてしまうこと、それから誤嚥させてしまうことによって、VAPが発症する率が高いと言われています。鼻から吸引チューブを入れるということは、鼻腔の中にある雑菌を押し込んでしまうことになりますし、アスピレーション等で誤嚥防止する観点からいけば推奨されないのだと思います。さらに鼻腔粘膜を出血させてしまうトラブルも考えられます。そういったこともあって、最近は推奨されないというように参考書などには書かれています。
  • 理学療法士からの質問です。吸引後に、このようなバイタルサインに変化が起こったら危険・・・というような判断するような指標があれば教えていただきたいです。また、その時の対応方法についても教えて下さい。
    評価するバイタルの値ですが、まずは患者さん個々で平常時のバイタルの数値がいくつなのかを把握しておくことが大事です。リハ前の正常値とどこまで逸脱したのかというようなことを指標にすることです。一般に言われるショックな値は、血圧でいうと90以下、80を切ってくるようであれば考えなくてはなりません。また値というよりショック所見を示すには、皮膚が冷たくなっていたり、冷や汗をかいていたり、血圧よりも橈骨動脈の触れ方がどうかということの方が指標としては良いかもしれません。よく橈骨が触れていたのに、若干橈骨動脈が触れなくなってきた、ということだとやはり血圧が80を切っていたり、呼吸回数などもショックの所見の指標になったりします。そういったことで正常よりも逸脱しているかどうかを見極めることです。
    もしもそういった症状が出た時の対応としては、当院の場合は患者さんが変だと気づいた時点で、院内の救急レスポンス体制をコールしなさいということになっています。リハビリの後など、ちょっと変だなあと感じたのであれば、そこは躊躇しないでコールしていただければ、事前に防げることも多いです。ちょっと違う話になってしまいますが、心肺停止に至ってしまう患者さんの6割から7割くらいの方は、8時間くらい前に何かしらのサインを出しているというデータもあります。何か変だと気づくことは非常に大事な感性ですので、それは躊躇しないで病棟のスタッフをすぐに呼んでいただくということで良いと思います。参考までに当院では入院病棟のスタッフではなく、救急のスタッフを呼ぶシステムづくりをしています。
  • 人工気道を用いない、気管吸引の場合で、1回の吸引時間は10秒を超えないよう奨励されています。ただ気管に挿入しにくい方の場合に、気管に入った時にできるだけ吸引したいためか、いったん吸引して、次に吸引圧をかけないで(バキュームとの接続をはずして)吸引カテーテルは留置したまま、5~10秒程度休んだのちに再び接続し、吸引を行う場面があります。良いとは言えないにしても気管に入りにくい方の場合、吸引圧をかけなければ、このような手技は大丈夫でしょうか?
    まず、それはほんとうに取る必要のある痰なのか?ということを、もう一度考えてみていただければと思います。ほんとうに主気管支レベルにたまっていて、しかもSpO2の低下がある、という場合でしたら気管吸引を実施しなければいけないかもしれません。しかし、それで痰を引きに行ったら1回の10秒で引けなかった・・・。先ほどの質問でもありましたが、誤嚥のリスクであったり、感染のリスクであったり、吸引チューブが気管内で留置されていることによっておこる合併症を考えなければいけません。一度そこは逃げていただくということにした方がよろしいのではないでしょうか。痰があることのリスクよりも誤嚥等のリスクを取った方が、患者さんのその後の生活にとって非常に高いリスクとなりますので、推奨はされない手技であると思います。