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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第1回 基礎から学ぶ酸素療法 [基礎]

杏林大学医学部付属病院 集中ケア認定看護師
露木 菜緒

ライブ研修 4月4日(水)/ オンデマンド研修 4月9日(月)〜5月7日(月)

酸素が100%設定で投与されていたら、患者さんは100%の酸素を吸っていると思っていませんか?低流量システムと高流量システムの違いがわかりますか?
ナースが日常的に行っている酸素療法ですが、そのしくみや正しい使い方は意外に知られていません。酸素療法も使用方法を間違えれば生命に直結するエラーにつながります。酸素療法に関する事故事例も振り返りながら、今さら聞きにくい正しい酸素療法について解説していきます。また、酸素療法も進歩しています。最新のシステムや酸素マスクなども供覧します。

発信会場:会場:パラマウントベッド本社(東京都江東区)

第1回 基礎から学ぶ酸素療法 [基礎]

質疑応答

  • 酸素の加湿は何リットルからしますか?
    酸素の加湿についてはガイドラインによって違いますが、日本のガイドラインでは低流量システムでは3L/分、高流量システムでは40%以上から加湿すると書かれています。しかし、酸素だけ加湿しても、1回換気量の中の数%しか酸素が占められていないため、口渇の時は酸素だけ加湿しても改善につながりません。酸素の周りの空気の方が吸う量が多くなるため、(病院では困難ですが)室内を加湿するほうが効果的です。また、口渇の原因が脱水であることも多く、脱水の是正をする、含嗽をする、氷など冷感刺激を与える、そのほか、歯磨きをすることで口内の爽快感を得るだけでなく、その刺激が唾液の分泌を促し口内の湿潤環境を作るなどの介入をすると口渇の改善につながります。少なくとも酸素の加湿だけでは口渇の対応は難しく、原因を考え、多方面からアプローチしてほしいと思います。高流量システムも周囲の空気を混合して流量を作るため、酸素だけを加湿しても変わらないことは同様です。ただし気管切開など人工気道を有する患者は、流量・濃度に関わらず必ず加温・加湿が必要になります。(天然の加温加湿器である上気道がバイパスされているためです)高流量システムを使用する、もしくは低流量システムでは人工鼻を使用します。人工鼻の仕組みはフィルターが付いており、フィルターで呼気をトラップして呼気中に含まれる体温で温められた水蒸気をもう一度再呼吸することで加温加湿します。
  • 鼻カニューラを使用中に患者さまが口呼吸をされていることがあるのですが、効果はあるのでしょうか?
    完全な鼻閉患者であれば、効果は減少するでしょうが、酸素は顔の周囲に流れていますので、全くの無効というわけではないと思います。
    口呼吸の患者には鼻カニューラを口に当ててもいいですが、最新のデバイスとして紹介したオキシマスクは、5L/分以下の低流量でも可能ですので、カニューラに変更する必要もありませんし、口呼吸の患者に対応もできます。口の部分があいていますので、会話や食事も可能です。
  • 鼻カニューラで口呼吸をしていて酸素飽和度が上昇しない場合は酸素を上げたほうがいいのでしょうか?マスクに変える場合は5リットル以上ですか。
    完全な鼻閉患者であれば、まずは鼻カニューラを口に当ててもいいでしょう。
    完全な鼻閉でなければ、酸素は顔周囲に流れているため、鼻呼吸でも口呼吸でも酸素飽和度が変わらないこともあります。
    口に鼻カニューレをあてても酸素飽和度が上昇しなければ、鼻カニューラ程度の酸素濃度では足りないのです。その場合はマスクに変え、5L/分以上、つまり現在よりも高濃度の酸素が必要になります。
    ただし、安易に酸素濃度をあげるのではなく、酸素飽和度が低下した原因を考えた方がいいです。
    また、最新のデバイスとして紹介したオキシマスクは、5L/分以下の低流量でも二酸化炭素が貯留しないため、使用可能ですので、鼻カニューラに変更する必要もありませんし、口呼吸の患者に対応もできます。
    口の部分があいていますので、鼻カニューラのメリットである会話や食事も可能です。
  • 気管切開をしている方でネブライザーで加湿の指示が出たときはどのように加湿したらよいのでしょうか。人口鼻を外してTピースでつなげることは効果があるのでしょうか?
    加湿目的のネブライザーは現在は推奨されていません。
    吸気が十分できる患者であっても、吸いこんだ薬剤が肺胞まで届くのは良くて3%程度ですし、呼吸筋が低下するなど十分吸気流速が少なければ、1%程度です。
    また、気管は体温で温められ、およそ37℃100%の湿度です。ネブライザーは室温ですから、28℃の冷たい霧が気管に入れば、温められ飽和水蒸気量が変わります。すると、足りなくなった水蒸気は気管から奪うことになり、逆に不感浄泄を増加させることになります。さらに、ネブライザーの分子は大きく、硬い痰の上に水滴を乗せても混ざり合わないように、いくら気管に水分をいれても、痰が柔らかくはなりません。
    ネブライザーのあとに痰が引けているような気がするのは、ネブライザーの水分を吸っているだけです。
    ただし、メプチンなどの気管支拡張剤は効果があります。目的が気管の拡張であり、気管でしたら、ネブライザーで届くからです。その際は人工鼻をはずし、Tピースもしくはトラキオマスクなどで行います。ちなみに、人工鼻とネブライザーは併用禁忌です。人工鼻のフィルターがつまり、窒息の原因になります。
  • 人口鼻の交換頻度は?痰ですぐに汚れてしまう場合は何度も変えなければなりませんがそういう方はTピースでもいいのですか?それとも交換頻度は多くても人口鼻を使用したほうがいいのでしょうか?
    痰で汚れて何度も交換しなくてはいけない患者は、人工鼻の適応ではありません。気づくのが遅れたら窒息につながり、患者の生命危機になります。
  • COPDの方は酸素飽和度が80%台でも呼吸困難を訴えたり呼吸回数が増えなければ酸素の量は増やさなくてもいいですか?何リットルまでは大丈夫なのでしょうか?
    何L/分まで大丈夫などというものはありません。指標は自覚症状と低酸素症の有無です。自覚症状がない、末梢チアノーゼなど低酸素症の徴候がないようであれば、生体がそれで代償できているのでしょう。安定しているときの酸素飽和度と血液ガスの値を確認しておきます。しかし、同じ値でも、通常はよくても、感染などをおこし、生体が通常よりも酸素を必要としている状態であれば、呼吸苦や低酸素症の徴候が出てきます。
    その時は慎重に酸素投与量を増量じます。怖いのは、呼吸も落ち着き、やっとうとうとしてきて落ち着いたようにみえた状態が、CO2ナルコーシスになって呼吸停止していた!ということがないように、意識、呼吸数を観察することが大事です。また、酸素を増量するときは、可能であれば経皮的CO2モニターを装着して、CO2をモニタリングすると異常の早期発見につながります。
  • 講義内容でも触れられていたのですが、 COPD患者様が急性増悪で入院されることが多々あります。その際CO2ナルコーシスになることもあり、酸素投与の難しさを実感しています。当院には高流量システムがなく、細やかな流量と濃度の調節が出来ていないことも関係があるのではと考えています。一概には言えないと思いますが、COPD急性増悪の際、どのように対応するのが良いとお考えか教えてください。
    COPDの急性増悪は、高度の低酸素血症、高二酸化炭素血症を認めることが多いと思います。低酸素血症は介入しなければ生命危機に至りますので、酸素投与を行い、吸入気酸素濃度を上げます。PaO2≧60mmHg、SpO2>90%になるように酸素流量を溶接します。質問者の方も言っているように、CO2ナルコーシスが怖いですから、指摘酸素濃度になるように、微量計の酸素流量計を用いることもあります。指摘酸素濃度が維持できなければ高濃度酸素を投与せざるえない場合も多々あります。酸素投与しはじめたら、CO2、pHは適宜確認します。経皮的CO2モニターがあれば装着します。呼吸苦・呼吸パターン・意識レベルの確認は当然です。米国胸部疾患学会のCOPD急性増悪患者に対する低酸素血症補正のアルゴリズムを添付します。

    それでも低酸素血症の持続やアシドーシスの存在などは機械的人工換気、NPPVや気管挿管を考慮します。NPPVはCOPD急性増悪患者に対し, バイタルサインと呼吸苦を改善させ, 気管挿管率を下げるとの報告もあり、有用性が示されています。

    COPDに関しては、日本呼吸器学会からCOPDガイドラインやNPPVのガイドラインも発表されていますのでぜひ参考にしてみてください。
    COPD急性増悪患者は、急性増悪を起こす原因によって、酸素需要が増加しています。しかし、COPD患者は指摘範囲が非常に狭いという特徴を知り、酸素量の調節やNPPV導入のタイミングなどが遅れないよう、注意深く観察し介入していくことが重要と考えます。
  • 呼吸器内科などの混合病棟で勤務しておりますが、ルームエアー下で人工鼻をつけている患者様が入院されています痰が多かったりそんなにだったりとまちまちで、 1日1~2回交換しています。 2回/日交換する頻度が増えるようなら人工鼻は使用しないでガーゼで対応したほうがいいといわれますが、1~2回程度の交換なら人工鼻使用のままでいいのか、変えたほうがいいのか、そのタイミングと、人工鼻を使用しない時の適切な管理方法を教えてください。
    人工鼻交換のタイミングは、はっきり言えば回数ではありません。もちろん、目安にはなりますが、粘稠痰が人工鼻フィルターに付着し、換気できず、窒息することが一番怖いのです。「1~2回程度の交換なら人工鼻使用のままでいいのか」とのご質問ですが、 1回でも2回でも、フィルターの根詰まりに気づければ患者にとって問題なく、 1回でも2回でも気づかなければリスクです。あとはコストの問題です。1回や2回の交換なら病院側が許容できるか否かではないでしょうか(おそらくDPCなどでしょうから・・・)。人工鼻を使用しないときの代替の方法は決まったものはありません。当院もガーゼに変えますが、粘稠痰がガーゼに付き、痰付きガーゼで気管切開口がふさがりそうなときがあるので、トラキオマスクを酸素を流さず、使用したりします。トラキオマスクだけでは加湿が不十分になってくるときは、その上からガーゼで覆ったりしています。しかし、これは当部署のやりかたであり、全国的に推奨されるものではないと思います。ちなみに、人工鼻以外の方法を選択するときは、必ず主治医と相談して行っています。特にトラキオマスクは適応外使用方法ですので、万一なにかあった場合に、看護師の判断だけでは責任問題になりますので、医師をはじめ、チームでのコンセンサスが必要になります。
  • 救急カートに常備されているバックバルブマスクに、リザーバーがついていないのですが、それは、急変時に使用するにあたって、影響がないものなのかどうかということが知りたいです。バックバルブマスクには、リザーバーは必ず必要だと思っていたのですが・・・。
    必要です。リザーバーがなければ高濃度酸素での換気ができません。自己膨張型ですので、膨張するときに室内気を吸い込みますから、かなり低濃度になります。救急カートに入っているBVMを使用するときは、蘇生時など高濃度酸素が必要な時が多いでしょうから、リザーバーはセットにしておくべきです。講義の最後に紹介した雑誌でも酸素療法を特集しています。そこにリザーバーあり、なしでの酸素濃度の違いがでていますので、確認してみてください。