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Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第11回 そこが知りたい!薬剤知識~問い合わせ事例より~

東京医科大学病院薬剤部
鮎原 秀明

ライブ研修 9月5日(水)/ オンデマンド研修 9月10日(月)〜10月8日(月)

日頃、当院の医薬情報室に寄せられる問い合わせ事例の中から、看護師さんからの問い合わせが多い事項・内容について取り上げたいと思います。具体的には、配合変化、相互作用、副作用、薬剤の安定性(保存条件や簡易懸濁の可否など)を中心に、各々の項目の中でも特に重要と考えるポイントを説明したいと思います。
当院での実例をもとにしますが、配合変化が多い薬剤、溶解液が規定されている薬剤、相互作用に注意が必要な薬剤など、どの施設でも数多く問い合わせを頂いていると予想される項目を取り上げていきます。

発信会場:発信会場:葛西昌医会病院(東京都江戸川区)

第11回 そこが知りたい!薬剤知識~問い合わせ事例より~

■ 第11回研修レジュメを準備しました。ご契約施設担当者の方は、事務局からのメールに記載のページよりPDF資料をダウンロードして下さい。

質疑応答

  • 薬の副作用についての質問です。薬を飲んですぐ後に気持ち悪いなどと出る副作用については、私たち看護師も「新しい薬を始まったせいだろうか」と気づくことができますが、時々4〜5日経ってから気持ち悪いという訴えがあったり、数日経って発疹が出ていたりすることがあります。そういうのも新しい薬の副作用ととらえて良いのか迷ってしまうことがあります。どのように対処したら良いか教えて下さい。
    実際に服用したときのタイミングと薬の副作用が出る関係は、飲んですぐ出たら副作用で後から出てきたから副作用ではないとか、判断は難しいと思いますが、ある程度は薬によると思います。例えば、薬剤自体が直接消化管に影響を与えるようなものであれば服用のタイミングと副作用出現のタイミングには相関があると考えられます。ただ、その時の患者さんの病態も少しずつ変化しますので一概には言えません。皮膚障害や、アレルギーはI型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型とあり、すぐに出てくるものもあれば後から皮疹が出るものもあります。ある薬剤はⅣ型のアレルギーが多い、などの傾向がある程度わかっているものもあるので、気になった薬剤があればどんなタイプのアレルギーが多いか薬剤師さんに確認してみてください。
  • 薬剤師からの質問です。注射の配合変化に関して、よく使う薬については周知していただいていますが、特に夜間など薬剤師を通さず医師から指示が出て、そのまま投与することもあります。当院でもできれば一覧表を作って配合変化の注意を促したいと思っていますが、実際に先生の施設ではどのようにされていますか?
    当院の薬剤部を上げて管理をして、ということはなく、病棟薬剤師が担当病棟からの依頼に対応して、こういうのがあったら良いなあということで作っている事はあります。ですので、薬剤部で共通したフォーマットを使っているという段階ではないですが、今後は共通のフォーマットで各病棟で作成していければと思います。
  • 薬剤部に問い合わせても「おすすめはしません」と返答があります。実施してもいいのか教えてください。 内容としては、ルート確保が困難で、単独投与が推奨される例でした。薬剤名は忘れてしまいましが、すべてのルートをお伝えして、製薬会社に確認してもらった結果でした。 結局はデータがないとのことで「おすすめはしません」というように言われたのですが、現場としては困惑しました。最終的には、メインルートを止めて投与しましたが。 薬剤師さんから「大丈夫ですよ」の言葉が欲しかったので確認したのですが、悩んでしまいました。「おすすめしません」と言われた時、現場ではどう対応したらいいか、薬剤師さんの立場で教えていただければ幸いです。おそらく最終的には、医師の判断になると思いますので・・。
    ご質問ありがとうございます。まさしく現場で遭遇する悩ましい問題だと思います。 「おすすめはしません」って言われても、結局どうなの?という心境だと思います。 詳しい状況はわからないですが、「おすすめはしません」とお答えした薬剤師さんの心境、思考過程を同じ薬剤師という立場から推測してお答えしたいと思います。
    まず、状況を整理すると、①同時に投与したい症例である。②しかし、配合変化のデータはない。③単独投与が推奨されている。という事だと思います。
    質問の中で、「大丈夫ですよ」の言葉が欲しかった、とありますが、薬剤師であればこの状況で「大丈夫ですよ」とはまず答えないです。では、薬剤師が「大丈夫です」と回答する時はどんな時かと言えば、「配合変化のデータがあり、問題ないとわかっている時」だけだと思います。つまり、「大丈夫」と言えるだけの「根拠がある時」だけです。
    ですので、「おすすめはしません」は結局のところYesなのかNoなのかと聞かれたら、YesでもNoでもありません。では、結局何なのだと言われれば「分からない」と言う表現が一番近いと思います。
    ただ、これでは何も解決になっていないので、実際にどう対応すれば良いか判断は難しいままだと思います。ですので、「おすすめはしない」という答えに至った理由を聞くと良いと思います。もちろんデータがないというのは、1つの理由ではありますがそれならば「データがないので何とも言えない、わからない」という答えになると思います。「おすすめしない」という表現であれば、データがないという理由以外にも何か判断材料があったと思います。例えば、添付文書に単独投与する事と記載されている、pHから判断したら配合変化が起きそうだ、点滴の時間が短ければ大丈夫そうだが今回は時間が長いからダメかもしれない、などの判断材料があったと思います。 たしかに仰っているように、最終的には医師の判断だと思います。ただ、このように理由を聞き出すことで、その判断をするためのより詳しい情報提供になると思います。
    理想論を言わせて頂ければ、「現場としては困惑しました」とありましたが、実際に薬剤師がその現場にいて、「○○な理由でおすすめはできないです。ただ、点滴の速度を早くすればリスクは減ると思います」のように、「薬剤師も一緒に現場で困惑する」事ができれば状況も変わるのではないかと思います。
    最後に、薬剤師としての自分からの個人的な意見としては、「その状況だったら一緒にやるしかないよな。仕方ないよな。」と思う事はあります。 しかし、「仕方ない」は「大丈夫」とは違います。「仕方ない」場合は注意深く観察しながら、また看護師さんにも観察してもらいながらやります。苦しいですが、それしか解決方法がない場合もあります。
    ですので、薬剤師を「大丈夫ですよ」の一言をもらう存在ではなく、「一緒に悩む相手」としてとらえて頂けると幸いです。