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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第1回 実践につなげる感染防止対策

杏林大学医学部付属病院 医療安全管理部 感染対策室
感染管理認定看護師
中村 貴枝子 氏

ライブ研修 4月3日(水)/ オンデマンド研修 4月8日(月)〜5月6日(月)

医療施設での感染防止対策は重要な安全対策の一つであり、医療の質の向上の為に必要不可欠な事項です。年度始めのこの時期に、感染対策の基本である手指衛生(手指消毒・手洗い)や個人用防護具の使用のベストなタイミングを再確認するとともに、わかっていてもなかなか徹底できない感染対策の基本をいかに徹底できるようになるのか一緒に考えたいと思います。加えて、ノロウイルスやインフルエンザウイルス等の集団感染の防止について職業感染防止も含め解説します。

発信会場:発信会場:富士吉田市立病院(山梨県富士吉田市)

第1回 実践につなげる感染防止対策

■ 第1回研修レジュメを準備しました。ご契約施設担当者の方は、事務局からのメールに記載のページよりPDF資料をダウンロードして下さい。

質疑応答

  • 講義資料の「消毒と滅菌のガイドライン」の中でノロウィルス汚染を受けた手指消毒の場合、ゲル剤よりも液剤の方が望ましいとありましたが、理由を教えてください。
    ゲル剤の消毒効果は液剤に比べ劣るとの研究報告がされているためと考えます。ただし、これらの研究の多くは欧州の基準である60vol%イソプロパノールで比較検討をしており、近年、本邦の薬局方で定められた76.9~81.4 vol%のエタノールによる比較検討においてはゲル剤と液剤の消毒効果に違いがないとの報告がなされています。しかし、まだ検討が必要な段階と考えます。液状タイプの特徴は使用感がよく、安価なものが多いですが床にこぼれたり揮発したアルコールのにおいが気になることがあります。ゲル状タイプの特徴は、床にこぼれにくく手指に塗り広げやすいですが連続使用すると保湿成分が皮膚の上に重なり定期的に洗い流す必要があります。これらの特徴を考慮し、手指消毒剤を選択していきます。
  • 当院ではまだ蓄尿をしているのですが、減らして行くようにしたいと考えています。そのためにはどのような取り組みをすべきか教えてください。
    私の施設でも蓄尿を減らすことは課題となっております。第一段階として、どのくらい蓄尿あるいは尿道留置カテーテルを入れているのか、院内で何%くらい実施しているのかというのを、まず数値を出して評価をすることです。そしてそれを繰り返して蓄尿の廃止に向けて取り組んでいます。
  • 防護用エプロンは、袖無しでもよいのでしょうか。
    汚染が広範囲で衣服全体や腕を覆う必要のある時はガウンを、汚染が体幹部に限局できる場合はエプロンを使用します。
    防護用具の再利用は望ましくなく、使用の度に着脱する必要があります。曝露量や範囲が多いケアや着用者の腕や腋下などへの汚染が予測される場合は袖のついたガウンを、それ以外通常のケアの時などはガウンより安価で着脱の容易な袖の無いビニールエプロンを使用します。
  • 手指衛生の5つの瞬間(タイミング)をするためには、ベッドサイドに常に消毒剤を置いておくということでしょうか。
    WHOが提唱する手指衛生の5つの瞬間は、手指を介した病原微生物の伝播を極力抑えるために必要な手指衛生のタイミングをわかりやすく示しているものです。手指消毒剤は医療従事者の動線を考慮し、最もアクセスしやすく使いやすい場所に設置をすると良いでしょう。使いやすい場所はベッドサイドの場合もあるでしょうし、処置ワゴンや電子カルテなどのワゴンへの設置の場合もあるでしょう。患者の誤飲のリスクが高くベッドサイドに設置できない場合は、携帯用の手指消毒剤の利用も検討しましょう。また、最近では移動しながらでも必要な場面でタイミングよく手指衛生ができるようウエストベルトやポシェットタイプの手指消毒剤入れが各社考案されていますので、これらの使用を検討しても良いでしょう。
  • ノロウィルス汚染防止についてアルコール消毒は有効でないような記事を見かけますし、当院でもそのように周知していますが、講義資料では有効と書いてあり、とまどっています。 真偽のほどはいかがでしょうか? また、有効な使い方を教えてください。
    ノロウイルスは「エンベロープ」がなく、色々な消毒剤に対して比較的高い抵抗性を持ち、アルコールは消毒効果が低いと考えられていました。しかし最近の研究では、アルコールでの消毒効果が認められる結果が報告されるようになり、CDC医療現場におけるノロウイルス胃腸炎の管理と予防のためのガイドライン(2011年)や本邦の新版消毒と滅菌ガイドライン(2011年)で、アルコールの消毒効果が認められた記述がなされました。
    ノロウイルスに対して次亜塩素酸ナトリウムもアルコールも消毒効果があり、次亜塩素酸ナトリウムは消毒効果が高い。そこで、ノロウイルスに対する消毒の有効な使い方は以下の通りと考えます。
    手指衛生は、基本的には手指についたノロウイルスを洗い流すため石けんと流水による手洗いを行う。すぐに手洗いできない場合は十分な量で手指消毒をする(手指には次亜塩素酸ナトリウムは手荒れの原因となるため使用できない。アルコール消毒は、3mlなどの通常より多い量が必要である)。 ドアノブなどの環境消毒は、消毒用アルコールもしくは次亜塩素酸ナトリウムを用いる。消毒用アルコールの清拭がより適しているが、消毒効果がやや弱いので2度拭き(清拭して15秒間程度経過後に清拭する)を行う。次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合は、適正濃度に希釈する。有機物(血液、体液、食物残渣)の存在により濃度や効果が低下するため有機物を取り除いた後消毒する。アルコールに比べ臭いが強い。プラスチックや金属の劣化をきたしやすい。などの注意が必要である。いずれの消毒薬を使用する場合も、清拭にてノロウイルスをその環境から取り除くことが重要で、清拭後は速やかに廃棄する必要がある。
    *「エンベロープ」とは、インフルエンザウイルスなど一部のウイルス粒子に見られる膜状の構造のことで、大部分が脂質でできているため、石けんやアルコールなどの消毒薬に弱い特徴があります。ところがノロウイルスは、この膜がないタイプのウイルスで、そもそもアルコールが効かないだろうと考えられていました。
  • ノロウィルス感染症の吐物、便汚染の処理方法について質問です。塩素系の漂白剤や消毒液等で殺菌消毒が基本となるようですが、布団等に感染源が付着した場合はどうすれば良いのでしょうか。廃棄処分にするにはしのびないのです。何か良い方法があったら教えてください。
    ノロウィルス感染症の吐物、便汚染の処理方法は、洗浄により吐物便汚染を洗い流す(手洗いなど)、消毒薬により殺菌する(次亜塩素酸ナトリウム、消毒用アルコールなど)、熱水消毒(80℃10分)により殺菌するといった方法があります。 布団等の表面は洗い流し消毒薬をつかうことで処理できますが、中にしみ込んだものについては十分に洗い流すことはできませんし、消毒薬も有機物が残っている状態では効果が期待できません。そこで可能なのが熱による消毒となります。熱消毒ができない場合には廃棄処分としてはいかがでしょうか。
  • 初歩的な質問ですが、MRSA, CDトキシン陽性患者に接する際、バイタルサインをとる時も手袋、ガウン、マスクが必要なのでしょうか。
    MRSAやCDトキシン陽性患者等で接触予防策の必要な患者には標準予防策に加えて接触予防策として、部屋もしくは患者のエリアに入る時に手袋・ビニールエプロン(ガウン)を着用します。また、その部屋もしくは患者のエリアから出る時には手袋・ビニールエプロン(ガウン)を外します。マスクは接触予防策には必須ではありません。
    個人用防護具(PPE)の種類と着用の場面は、配布資料のスライド16を参考にしてください。
    どのような時(CDトキシン陽性や菌検出であっても接触予防策が必要でない場合もあります)に接触予防策を行うのかなど接触予防策の具体的な方法は施設のマニュアルをご確認ください。不明な点は、是非施設のICTにご相談することをお勧めします。