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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第5回 胸腔ドレーンシステムの理解と観察

杏林大学医学部付属病院 集中ケア認定看護師
露木 菜緒 氏

ライブ研修 6月5日(水)/ オンデマンド研修 6月10日(月)〜7月8日(月)

胸腔は生体内で唯一陰圧の部位です。 そこに挿入されている胸腔ドレーンは、陰圧の維持、胸腔ドレナージのために重要な治療です。しかし、胸腔ドレーンシステムは理解が難しく、インシデントも多く発生しています。今回は3連ボトムシステムを基本に、胸腔ドレーンのシステムを正しく理解し、インシデント事例から対応も考えていきます。

発信会場:発信会場:公立昭和病院(東京都小平市)

第5回 胸腔ドレーンシステムの理解と観察

■ 第5回研修レジュメを準備しました。ご契約施設担当者の方は、事務局からのメールに記載のページよりPDF資料をダウンロードして下さい。

質疑応答

  • インシデント事例という事で挙げられていたのですが、当院の場合、トロッカーとドレナージシステムの間に接続が外れない様にタイガンで止めているのですが、それが外れてしまった場合もやはり緊急時はクランプする事が基本になるのですか? 気胸の場合、外れた時にクランプする事で緊張性気胸を起こすリスクがあるという事で、カップなどに滅菌水を入れて水封状態にするという様な文献を見た事があったのですが、接続が外れてしまった場合というのはクランプするというほうが正しい対応になるのでしょうか?
    完全に接続が外れてしまったのでしたらクランプして頂いた方が宜しいかと思います。 滅菌カップに蒸留水を入れて準備する時間がありますね。人はそんなに長い間呼吸を止めていられる訳では無く、その間も空気を吸い込んでしまうので、外れてしまったら直ぐに鉗子で挟んで頂いて、その間に新しいバッグを用意して交換すればいいのです。すぐに新しいドレナージバックの準備出来ない場合は、質問のようにカップに蒸留水を入れてドレーンの先端を付けて水封にしておく方法が良いと思います。 とにかく大気を胸腔内に吸い込まない様にする事が最初にすべき対応です。鉗子が無かった場合は手で折って頂いても構いません。 長くクランプしていない限り緊張性気胸にはなりませんので、空気を沢山吸い込んでしまう事を優先にリスク管理された方が安全ですね。
  • 血胸がある患者さんなのですが、元々胸水が沢山あったみたいでドレナージを開始してからかなり大量に排液があり、血だけでは無く胸水も出ていたみたいなのですが、大量に排出される事によって患者さんに与える侵襲というのはどれ程なのでしょうか?
    再膨張性肺水腫というのを知っておきましょう。 胸水が溜まっていたり、肺が虚脱していた時間が長ければ長いほど、再膨張性肺水腫というのは非常に起こり易くなります。 例えば胸水を1000ml以上一気にドレナージした時など、虚脱していた肺の再膨張も一気におこり,肺血流の再灌流がおこります。虚脱していた肺はフリーラジカルというような細胞を傷害する物質が出ており、肺の膨張とともにそれらが一気に潅流し、血管透過性亢進を生じた結果、肺水腫をおこすのです。 ドレナージをして胸水を抜いて肺が広がったと思っても数時間後にまた苦しくなり、X線を撮ると肺が水浸しになっているということがあります。これを再膨張性肺水腫と言います。 また、胸水が溜まっていて1000ml以上一気にドレナージし、体液量が急激に変わると、ショックを起こしたりと循環変動もきたし易くなりますので、少なくとも1000ml以上を一気に抜くという事は非常に危険ですので、500ml程度をめどに一度クランプするなり、少しマイルドなドレナージの時間にした方が 安全です。
  • 排液ボトルの交換は排液が少ない場合最低何日に1回交換ですか。
    排液ボトルの交換に決められた日数はありません 排液ボトルがさほど満ちていなければ交換する必要はありません。 ただし、本当に排液が少ないのか、途中で閉塞などおこしていないか確認する必要はあります。 また、排液バッグの交換は、自分の勤務帯は大丈夫だと思っても早めに交換しましょう 完全に満杯になると大変なことになります。
  • 胸水貯留の場合、移動時は低圧持続吸引を施行中の場合どうしたら良いですか。もし施行したままで、とのことであればストレッチャーの場合はストレッチャーの上に機械を置いての移動はいいのでしょうか。
    移動時はクランプが原則です。 クランプせずにストレッチャーの上に置くなどすると、排液が逆流したり、水封部 の水がこぼれたりして危険です。 気胸時は気胸の増悪、緊張性気胸のリスクからクランプせずに移動します。 その時はベッドの上に置くのではなく、体の下に位置でき、かつドレナージシステムの転倒がないように確実に固定することが重要です。
  • 病棟で胸腔ドレナージ洗浄をする事例が連続してあったのですが、施行時の注意点を教えていただきたいです。
    患者像や洗浄の目的がわかりませんが、少なくとも入れた以上にドレナージできなければ洗浄水が胸腔に残ることになるので、洗浄水を入れた分回収できているかをみるのは必要でしょう。 それから、洗浄の排液の性状の観察。洗浄するのであれば、おそらく膿胸であることが予想されますが、膿胸であれば膿が洗浄・ドレナージできたか否か、膿胸の原因にもよりますが、感染で炎症をおこしているのであれば、菌の検出がされているのか、 感受性の高い抗菌薬を使用されているのか。炎症データは改善してきているのか。 もし、洗浄水を入れた分回収できない、膿胸もなかなか改善せず難治性であるなどの状況が続けば、開胸して搔把・洗浄などが必要になるかもしれません。 また、報告例としてはまれですが、胸腔内洗浄の手技に伴って生じるPCAE(paradoxycal cerabral air embolism)などの発症にも注意が必要でしょう。