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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修
第6回 病態を予測した臨床検査値の読み方 〜とっても肝腎なこと
埼玉協同病院 臨床検査部長/教育研修センター長 臨床検査専門医
村上 純子 氏
ライブ研修 6月19日(水)/ オンデマンド研修 6月24日(月)〜7月22日(月)
検査に関する本の多くは、「AST/ALT:高値→急性肝炎、慢性肝炎‥‥」という記載になっています。これでは、眼の前の患者さんの病態を判断するのには殆ど役に立ちません。
検査結果を有効に利用するためには、AST/ALTの数値を「点」としてではなく、相互に関連し合う複数の検査項目とともに、時間的な経過も含めた「面」として捉える必要性があります。
患者さんの検査結果にみられる様々な異常値が、総合的にどのような病態を意味しているのか?そのことは、これからどうなっていく可能性を示唆しているのか?‥‥「異常値を呈するメカニズム」が分かれば、病態を予測することができるようになります。
発信会場:発信会場:東川口病院(埼玉県川口市)
■ 第6回研修レジュメを準備しました。ご契約施設担当者の方は、事務局からのメールに記載のページよりPDF資料をダウンロードして下さい。
質疑応答
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- 検査科としての質問です。最初の方で「基準範囲」についてお話していただきましたが、当院はグループ病院約20病院ほどで検査方法を統一しており、基準範囲は同じものとしております。先生の施設では、基準範囲を施設で独自に算出したり、あるいは何かの文献を引用されているなど、どのようにされていらっしゃるでしょうか?
- 基準範囲を厳密に求めようとすると、本当はひとつの検査について多くの基準範囲を定めなくてはなりません。例えばBUNにしても30代男性と60代女性で違います。いちいち細かく分けてしまうのは日常的にはあまり合理的ではないので、ある程度ざっくり広めに取って基準範囲にしていると思います。その「ざっくり具合」の統一ですが、私の施設では県内にいくつか関連する法人内の病院施設がありますので、そこで統一したものを使っております。そのほか外注先の検査センターがありますが、外注先とも統一が必要なので、その辺りで話し合いをして決めております。
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- 血清タンパクには肝臓の合成能力が反映されるということですが、肝臓がダメージを受けて合成能力が低下してきていることになるべく早く気づくためには、どんな検査に注目すれば良いでしょうか。
- 血清タンパクはものすごく種類が多くて、普通にルーティンの検査として測っているものと、特別に意識して測らなければならないものがあると思います。普段継続的に患者さんの傾向を見ていくには、ルーティン検査で測られるものが良いと思います。血清タンパクの中で一番量が多いのはアルブミンですが、アルブミンは作られてから半分の量に減る"半減期"が14-18日と長いので、殆ど作られなくなったとしても、明らかに低下するのに1〜2週間はかかります。タンパク合成能の低下をできるだけ早く把握するためには、もっと寿命が短いタンパク質を参照すると良いと思います。ルーティン検査の中で寿命の短いタンパク質を反映している検査に、プロトロンビン時間があります。プロトロンビン時間はいくつかの凝固因子を同時に見る検査ですが、特にプロトロンビン時間に含まれている第VII因子は半減期が5時間程度ですので、肝臓で合成が低下すると、割とすぐに影響が現れます。ですので、プロトロンビン時間が良いかと思います。
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- 血清クレアチニン値は筋肉量に影響されるということですが、普段データを見る上でどんな点に注意すればよろしいでしょうか。
- クレアチニンは腎機能の検査としてはとても有能な検査で、個人であまり変わらないとお話しましたが、筋肉量と運動量に左右されます。すなわち筋肉量の多い男性の方が女性に比べて高く、そのため基準値も男性と女性と別に設定されています。筋肉量が少ない、筋肉を使わないという時には低い値を示します。例えば、お年寄りでクレアチニンが0.9mg/dLくらいなら腎機能はまあ良いかなあと普通は思いますが、寝たきりでほんとうに筋肉が萎縮してしまっている小柄な女性のクレアチニン値が0.9mg/dLだとしたら、それはかなり腎機能が悪いのだと考えなくてはなりません。このように、患者さんの筋肉の量、どのくらい動いているかなどを含めて総合的に判断するのが必要な検査だと思います。
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