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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修
第4回 臨床推論レベルアップ~見逃してはならない疾患を見抜くコツ
高知医療センター救命救急センター 救急看護認定看護師
伊藤 敬介 氏
急変(シリーズ) STAGE2〜4
ライブ研修 5月25日(水)/ オンデマンド研修 5月30日(月)〜6月27日(月)
看護実践は、すべて「看護過程」の展開だといえます。看護過程とは問題解決過程であり、看護師は常に患者の抱える問題を解決するため、日々の業務をこなしています。
患者急変の場面に遭遇すれば、それは患者に新たな疾患や病態という「問題」が発生しているわけであり、看護師はこれを解決していく必要があります。その解決とは、患者の疾患や病態を予測し、その緊急性を見極めて初期対応を行うことといえます。この患者の疾患や病態を予測する考え方が「臨床推論」です。この「臨床推論」によって、看護師は患者の急変を発見し、適切な対応を実践することが可能となります。この「臨床推論」を楽しく学んでみませんか。
発信会場:発信会場:東京明日佳病院(東京都世田谷区)
質疑応答
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- 先生の病院でも院内トリアージをされていると思いますが、今まで印象に残っているような事例などありましたら教えていただけますでしょうか。
- 現在、私は管理職者になってしまいましたので、院内トリアージは行っていないのですが、以前は自施設のトリアージシステムの立ち上げから携わり、もちろん様々な患者様のトリアージを経験してきました。心筋梗塞や解離性大動脈瘤の患者さんへのトリアージなど、いろいろなケースを経験してきましたが、特に印象に残っているのは、アンダートリアージと呼ばれる患者さんの緊急性の高さを見抜けなかった症例についての経験です。 自宅でお餅を喉に詰まらせた高齢の女性が救急外来を受診しました。患者さんがお餅を詰まらせた時、たまたまそこにいらした看護師をしているお孫さんが詰まったお餅をすぐに取り出してくれたそうです。それで窒息は免れたのですが、そのあとから胸が痛いということで受診をされました。私はその患者さんへのトリアージを行ったのですが、「胸が痛い」との訴えでしたので、最初に想起したのは急性心筋梗塞でした。胸痛を引き起こす解離性大動脈瘤や肺塞栓なども緊急性は高いのですが、急性心筋梗塞は緊急性の高い疾患の中でも頻度が高いと言われています。そういった意味で心筋梗塞かとまず思い浮かべたのですが、窒息を契機としていますので、「心筋梗塞っぽくない」と判断しました。心電図上も異常がなく、痛みも今は大したことがないと言っていましたし、全くお元気でしたので緊急性は低いとトリアージをして、その旨を医師に伝え、診察を依頼しました。 そのあと、救急科の医師が診察をしたのですが、医師がどうも気になるからと言って、造影CTを撮影することになりました。画像診断の結果、突発性食道破裂であることが分かりました。それは嘔吐後によく起こる疾患ですが、頻度は心筋梗塞等に比べると非常に少ないのですけれども、早期に発見され、適切に治療されても17%が亡くなると言われている危険な疾患です。その時私はその疾患を全く思い浮かべてなかったわけです。ただ、医師が何かおかしいと感じてくらたおかげで、その患者さんの突発性食道破裂を見逃さずに済んだわけです。 院内トリアージの場面では、看護師は様々な患者さん相手に緊急性を判断していくわけです。院内トリアージにおいて、看護師は医師不在の現場で患者さんの疾患や病態を見抜き、緊急度を判断する必要があるわけですから、院内トリアージというものは非常にハードルも高いことだと思います。しかし、看護師による院内トリアージによって、医学管理料として患者様1人から1000円頂いているわけです。この突発性食道破裂の患者に対するトリアージは、看護師であっても強い責任感を持ってやらないといけないことだと特に実感した経験でした。そのため、私は患者の健康問題の裏に隠れている疾患を見抜き、看護師としてできることを正しく判断できるようにと、臨床推論を勉強してきたわけです。 現在、私の施設においても、トリアージナースの教育にこの臨床推論を取り入れまして、毎週のように実際の事例を通して臨床推論の学習をしています。自分達が経験した、特に緊急性が高かった病態に対するトリアージを後から検証し、リフレクションをしてトリアージナース全員で臨床推論の力を高める取組みをしています。先に述べたようにアンダートリアージというものは患者様には非常に申し訳ないのですが、自分がリフレクションして成長していくための宝だと言えます。実際に目の前で患者様にアンダートリアージをしてしまったら、もちろん患者様には申し訳ないと思うでしょうし、落ち込むこともあるかと思います。ですが、その経験を次に活かすということが大切であると感じています。 そういったトリアージの事後検証による臨床推論の学習によって、トリアージナース達は確実に疾患、病態を見抜き、緊急性を判断する能力を得つつあります。ある日、そのトリアージナースのコンピテンシーを院内の患者急変対応に活かすことを思いつき、現在は院内で患者急変があれば、発見者からのコールによって、トリアージナースを患者急変現場に向かい、トリアージナースによって緊急性の判断と適切な初期対応を行うシステムを構築して、院内の医療安全の質の向上を図っています。やはりトリアージを経験している看護師は、非常に緊急性を素早く見抜き、病棟の看護師にいろいろと指導をしてくれます。それは日頃の振り返りの成果だと思います。やはり、看護師は毎日の看護実践をただただ通り過ぎていくだけではなく、患者さんのためにもっと良くできないかと考え、失敗したと思ったなら、次に同じようなことをしないためにどういったことを学習する必要があるのかを仲間と議論し、共有することが非常に大切かと思います。
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