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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第12回 看護師のための認知症の人へのケアのポイント~病院で認知症の人を支える~

国立長寿医療研究センター副院長
鷲見 幸彦 氏

老年看護 STAGE2〜4

ライブ研修 9月21日(水)/ オンデマンド研修 9月26日(月)〜10月24日(月)

認知症の人が、経過中身体合併症を起こし入院を余儀なくされることがあります。しかし入院後に、せん妄、離棟・離院や転倒といった事象が発生し、入院の継続に難渋することが珍しくありません。認知症の人が入院という大きな環境変化に適応できず、せん妄や行動心理症状が誘発されることは容易に理解できますが、現在の急性期病院において、これらの病態に十分に対応できているかというと多くの問題が存在します。病院医療スタッフの認知症に対する理解の不足、適切なアドバイザーの不在も対応困難を助長しているようです。これらの問題点に対応することにより、一般病棟スタッフの認知症の人に対する対応力や対応技術の向上が期待できます。当センターの試みを中心に解説します。

発信会場:発信会場:聖霊病院(愛知県名古屋市)

第12回 看護師のための認知症の人へのケアのポイント~病院で認知症の人を支える~

質疑応答

  • 認知症の方にとって日中しっかり起きて夜しっかり休んでいただくことが大事だと思うのですが、患者さんに日中起きていていただく上で、先生の病院の看護師の方たちがどのように工夫をされているのかという点を教えてください。
    それだけでも1つ講義が出来るくらいの大事な質問です。まず昼間起きていてもらうことは実は意外と大変です。ポイントはいくつかあると思うのですが、まずやはり昼間起きているためには、朝起こすということです。これは最近生理学的にも言われているのですが、朝日に当てないとメラトニンができないので夜眠れないということです。ですからとにかく朝はある一定の時間に必ず起こし、お日様に当てるというのがまず1つです。 あと、出来るだけ午前中はお越し、実際に活動したり、動いてもらうといったことをやります。ただ身体的な動きを伴うリハビリは、少し工夫が必要で、疲れ過ぎると今度は変な時間に寝てしまうということがありますので、疲れ過ぎない適度なリハビリをやってもらいます。これはリハビリテーションの人の力を借りないと難しいかなと思います。病棟の看護師さんたちだけでは、なかなか大変かと思いますが、こういった仕組みが必要かと思います。 私のところでも部分的に行っていますが、院内デイサービスのようなものがあると本当は良く、講義の中で認知症サポートチームを三河の病院に3つくらい作ってもらったと話しましたが、その内の1つの病院は、たまたま小さなスペースがあり、院内デイみたいなことを始めています。院内デイで難しいのは、誰がどうやって患者さんをそこに連れて行くかといった人的な条件が意外と大変です。しかし院内にそういった仕組みがあると、病棟の看護師さんは安心して利用できますので、リハビリテーションも絡めた仕組みが必要かと思います。 それからもう1つは、睡眠の質を上げる工夫をすることです。朝起こすということと夜寝かせるという両輪が必ず必要です。夜寝かせるためには、眠りを妨げているものは何なのかをよく考える必要があります。結構問題なのが頻尿です。例えば心不全の患者さんであれば、利尿薬を飲んでいることもありしますし、意外としっかり水分とっている方もいます。入院中にお酒飲んでいる人はいないと思いますけれど、夜間の睡眠を妨げる要因は結構いくつかあります。そもそも入院という環境自体が睡眠を妨げているかも知れませんので難しいですが、できるだけ夜寝かせるための環境づくりをします。それから適当な眠剤の使用ということもあります。ご存知のように、ベンゾジアゼピン系の眠剤を使わないというのがポイントですので、ベンゾジアゼピン系以外の眠剤を上手に使って夜も寝て頂くようにします。 これは我々もまだ達成していませんが、病院では睡眠に入らせる時間がやや早いです。高齢の方でも消灯時間が普通の生活に比べると早いのではと思います。ですから、本当はもう少し遅い時間に寝るような工夫をすれば、より睡眠の質は上がると思います。
  • 転倒防止について何か工夫されている点がありましたらお聞かせください。
    転倒防止は諦めているわけではないのですけれども、もう転倒はするものだとして、転倒しても大怪我しないような、骨折しないような工夫が必要になります。骨折予防のパットなども付けてくださる方には本当に予防になりますが、装着感がイマイチですので付けてくれる方は付けてくれますけれど、だめな方はだめです。それから保護帽も嫌がるかと思うと意外とウケがよく、似合うよと言ってあげると喜んで保護帽をしてくれる方がいます。あらゆる方法使ってこういったものを付けてもらいっています。 それから様々なセンサー類も付けるということになると思いますが、24時間そばで誰かが監視していても転倒は完全には防げないと思います。ご家族が本当に熱心でそばにずっとついていても、目を話した隙に転ぶということはあるわけで、やはり完全には防げないので転んでも大怪我しないという工夫が必要です。 それからもう1つは薬の使い方は少し気を付けた方がよく、お薬でふらふらにしてしまうとなお転倒のリスクは高まるので、そういう治療をしていないか、常にチェックするようにしています。やむを得ない場合ももちろんあり、先ほどお話ししたように眠剤を使わなければならない場合もありますので、その場合はできるだけ筋弛緩作用のあるものは使わないといった工夫をすることになると思います。これをすれば100点満点絶対転倒予防ができます!というのがまだありませんが、可能が限りいろんなことをやっていくことになると思います。
  • 講義の中で家族もチームの一員という話がありましたが、特に認知症の場合、私たちが見てこの人は認知症ではないかと思っても、家族は認知症ではないですよとおっしゃり、認めたがらない場合も多いです。そういった家族に対してどのような対応をされているのか教えてください。
    実際、今まで診ていなかった方が急に救急外来にかかってその日に入院したという場合には、本当に認知症かどうかという判断はとても難しいと思います。病歴を聞いても家ではかなりしっかりしていたといったことを言われる場合もあります。講義の中でお話ししたように、せん妄状態の方が皆認知症とは限らないので、あまり逆にこちらが認知症と決めつけてしまうのも問題ですし、ご家族からも反発があるだろうと思います。ですから先ほどのように認知症があるかどうかはおいておき、とりあえずせん妄という状態が起こります…ということから話を進めた方がよいかも知れません。 私たちも認知症という診断は、特に急性期には安易につけないようにしています。認知症が疑われる場合は、少し落ち着いて退院が近くなってから、実はこういうことが起こる背景には認知症のこともありますので、物忘れ外来にかかってくださいというような指導をして帰す場合もあります。転院してしまう場合はそこが難しく、おそらく急性期の病院では、本当に認知症かどうかはっきりしない状態で転院させなければならないということもあるだろうと思います。急性期の2週間以内にほとんどの方が退院するような病院では、認知症の診断をすることは必ずしも容易ではないということになります。