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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第15回 がんと認知症を併せ持つ患者の医療と看護

藤沢湘南台病院 がん看護専門看護師
林 ゑり子 氏

STAGE1〜2

オンデマンド研修 11月11日(月)〜12月9日(月)

国立がん情報センターが公表している「最新がん統計」において、全がんの罹患率は男女ともに50歳代くらいより増加し、さらに高齢になればなるほどがん患者が増加している。高齢社会白書(2017年)においても、2025年には約700万人、すなわち5人に1人と推定されている。日本の高齢化社会および認知症の診断された方の増加に伴い、がんと認知症を併せもつ患者や家族にとっての問題が複雑になってきている。今回の60分では、1.認知症について、2.がんと認知症の医療と政策、3.がんと認知症を併せ持つ患者の看護ケアの実際、について、一緒に学習していきたい。

第15回 がんと認知症を併せ持つ患者の医療と看護

質疑応答

  • 先生の施設では臨床の患者様の痛みの評価として、スケールを使うのは難しいということで、見るべき項目を決めて評価されているとのことですが、私の施設で実施しますと、気づける看護師と過小評価してしまう看護師が出てくるかと思います。あらかじめ見るべき項目の項目立てをしておいてから誰でも行えるようにしているのでしょうか?それとも、何かその患者さんの表れ方に応じて1から練り直しているのでしょうか?
    アルツハイマーかもしれない、せん妄かもしれない場合で、患者様の判断力が落ちているときの目安としましては、私は先ず初対面で会ったときに、全くなければ0とし、すごく痛みがあるときを10とした場合に今の痛みはいくつですか?と質問をしています。それに答えられればアルツハイマー型認知症でもせん妄でもないと評価しています。質問を理解するのが難しく、その質問に迷って答えられない方に関しましては、NRSはそこでやめようということになっています。
  • 鎮痛剤を使った後に、フェイススケールなど併用されているのでしょうか?
    フェイススケールも使うことがあります。しかし、NRSが答えられない患者さんの場合、フェイススケールもやはり分からないみたいです。その場合は皆で相談して、日常生活の中で痛いかどうかを判断しています。
    「痛い」という言葉を使わずに痛みがある方もおりまして、体をさすっていたり、食事の際に気が進まなかったりといった方には、食事の前のレスキューを使用するとしっかり座れ、食事もでき、表情がニコニコしてきますので、表情のニコニコで評価しています。
    当院では、痛みに関しましては、5つ目のバイタルサインということで、カンファレンスの際に、患者様が痛いと言えなくても、痛いかどうか生活面の様子で話しあうことにしています。ある患者様は痛いと判断しても、別の患者様では痛くないと判断することもやはりあります。
    高齢の方は、初めからオピオイドは使用せず、アセトアミノフェンから使用することが多いのですが、アセトアミノフェンだけでも結構効き目があります。アセトアミノフェンは肝機能障害が心配ですが、腎機能障害の心配はありません。高齢の方にはロキソニンはあまり使用することはありません。
  • ICUで看護師として働いておりますので、なかなかがんの患者様に密に関わることがありませんが、ICUや急性期の患者様のご家族は、患者様が昨日まで元気だったのに急に全く逆の状態になってしまい、今まで全くそういったことを考えたことがない方が、緩和という選択しなければならないケースが結構多いように思います。急性期で、もし家族が突然全てを決めなくてはならなくなってしまい、例えばモルヒネなどを使うことで呼吸抑制などが起きて、死亡させてしまったといったときに、看護師として、ご家族にどういった声かけができるのか、何かご経験などありましたら教えていただけますか。
    腹痛や腰痛で入院してきた患者様を精査してみますと、ステージ4で痛みの原因は骨転移だったということがあり、若ければ若いほど現実についていけず驚きます。患者様は辛いですし、これからどうしていくかということを本当に短い時間に理解していただくために、一方的な説明だけではいけませんので、丁寧な応対を心がけております。悲しみや怒りなど感じていらっしゃることを聞きながら、治療をどうするかということもありますので、治療してもらえる施設でのセカンドオピニオンなども行いつつ、今抱えている患者様の痛みをどうするかという話もさせていただいております。そのまま我慢させてくださいと言うご家族はまずおりません。辛いのだけは取ってほしいということで痛みを取ることを始めていきますが、やはり説明は大事ですので、ご家族には安全性のある量から開始しますと伝えます。以前はありましたが、現在では使用方法が確立しておりますので、モルヒネでの呼吸抑制はありません。ですので、家族も驚いてしまいますので呼吸抑制の話は行いません。しかし、モルヒネのイメージが頭にあり、どうしても拒む場合には、現在では幸いにも選択肢が増え、医療用のオピオイドはモルヒネ以外にもありますので、そういった薬を使用します。
    注射薬ですとオキファストやフェンタニルやナルベインなどがあります。錠剤ですと、MSコンチンは薬の色が昔ながらの色で少し目立ちますが、オキシコドンなどは明るい色合いの薬ですので、結構抵抗なく飲めるというのがあります。
    嫌がることは無理にはせず、ご本人が受け入れやすいかどうかを考えるようにしております。しかし、患者様のご家族がついていけないケースがすごく多く、医療者を逆恨みするといったこともあります。私たちはがん患者様とご家族の心理の過程をすごく勉強しておりまして、例えば八つ当たりといった防衛機制のことも理解しています。怒られると本当に辛いですが、チームでカンファレンスをし、今は患者様やご家族が怒る時期であるということを理解しながら対応しています。泣いたりなじられたり、患者様もそうですが、特にご家族の方は選んだ選択肢の反対側を選んでいたらどうだったのか、どうしてもつきまといますので、そういった声を傾聴をするようにしています。