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S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第16回 放射線治療での看護の関わり

東邦大学医療センター大森病院 がん放射線療法看護認定看護師
北爪 麻紀 氏

STAGE2〜4

オンデマンド研修 11月25日(月)〜12月23日(月)

日本人の2人に1人以上ががんに罹患すると言われ、適切ながん治療は日本人にとって最重要課題ともいえます。がん治療の3本柱の一つを担う放射線治療は、全身への侵襲が少なく小児から高齢者までを対象とし、根治~緩和と幅広い目的での治療が可能、さらに外来通可能な治療方法で治療件数は増加しています。しかし、放射線という言葉から誤解やネガティブなイメージを抱く患者・家族も少なくありません。また、放射線治療室という特別な室内で治療が行われることから、医療者であってもイメージしにくく、有害事象も仕方がないと捉えられていることもあります。ところが、有害事象の悪化予防や症状の低減には、看護力が大きく関わっているのです。
今回の講義では、放射線治療の実際や有害事象の一つである放射線皮膚障害のメカニズムを解説致します。さらに、皮膚炎の経過やケアの実際について説明し、明日からの看護実践につなげられる内容となっております。

発信会場:平塚共済病院(神奈川県藤沢市)

第16回 放射線治療での看護の関わり

質疑応答

  • 講義の中で基本ケアの3番目として挙げられた保湿について質問です。マーキング部位に油分が乗るのはよくないと思いますが、症状が出ていない段階での皮膚の保護として保湿剤を塗ることの効果や、どういったものがよいのか、または避けた方がよいのか教えてください。
    保湿ですが、放射線皮膚障害に関して保湿が有効であろうということは最近言われてきています。ただ、まだ強いエビデンスにはなっておらず、医師の考えも大きく反映されてくるかと思います。私はまず、保清が大事と思います。そして保湿になります。最初の頃はもともと保湿の力を持っていますので、放射線治療を始める前にしっかり保湿をしている期間があり、いい肌の状態で治療が開始できるとさらによいかと思います。
    マーキングの部分に関してですが、治療中に保湿をするとなった場合は、マーキングの部分はやはり避けた方が無難です。当院はシールを使っていますが、途中で薄くなるので貼り直しをします。貼り直しをする前日に技師の方から、今日は保湿の軟膏を塗らないよう連絡が入るようになっており、患者様にもその旨を伝えてあります。シールを貼るときにも技師は優しく油分を拭き取ってマーキングをするということにしていますが、上からは付けています。この辺りについては医師の考えですとか、技師とやり取りをして、病院の中のルールとして検討してもらうとよいかと思います。
    保湿剤についてですが、一般的にはヘパリン類似物質が入っているものが使われています。最近は後発医薬品も出てきています。先発医薬品にはアルコール分が入ってないのですが、後発のものは乳液タイプではなく化粧水タイプになっており、さらさらしてアルコール分が入っています。それがどのくらい皮膚刺激になるかについては、私もデータを持っておりませんが、皮膚はかなり脆弱ですので、場合によってはアルコール分が入っていないものの方がよいかと思います。
  • 講義を聞いて、セルフケアがとても大切だということがよく伝わってきましたが、高齢の患者様も増えてきて、なかなかセルフケア能力が難しい患者様が多いと思います。日頃の関わりの中で、特に高齢者の方に注意している点や工夫されている点があればぜひ教えてください。
    高齢者の方の中には毎日入浴されていない方がいらっしゃったりします。その方に毎日入浴することのメリットをお伝えはしますが、強制はしていないです。今までその方が二日に一度、もしくは三日に一度で大きなトラブルなく生活してきているのであれば、その方の皮膚もその生活に馴染んでいるのであろうと考えています。
    その上で私たちが注意すべき点としては、他の方よりもさらに皮膚の観察を密にするということです。例えば、長い爪は容易に皮膚を剥離させますので、爪が伸びているようであれば、治療室に来られたタイミングで切ったり、また、病院に泡が出る洗浄剤を準備してありますので、それで簡単に照射野だけさっと洗浄し、押さえ拭きをして、なるべく清潔が保てるようにしています。
    講義の中で、いつ頃どのような症状が現れるか説明しましたが、それに当てはめて、症状が早く出ていなければその方の生活を大事にしたいと思っています。もし早く出ていれば、病院に来た際に介入することもありますが、基本的には患者様の生活を変えないということを大事にしています。皮膚炎に関しては必ずよくなります。
    また、食道や喉頭に照射される方にとっては、飲酒、喫煙は皮膚や粘膜にとても悪いです。こういった方は、喉頭、食道などむくみが強くなると、息が苦しくなったり、食べ物が食べられなくなったりし、治療の中断につながりかねません。そういった場合は禁酒、禁煙を強くお伝えしています。