年間スケジュールSCHEDULE

ホーム » 年間スケジュール » S-QUE院内研修1000&看護師特定行為研修 » 第4回 呼吸・循環のフィジカルアセスメント(1)

Eナース

S-QUE院内研修1000’ & 看護師特定行為研修

第4回 呼吸・循環のフィジカルアセスメント(1)

大分大学医学部附属病院 副看護師長 集中ケア認定看護師
尾野 敏明

ライブ研修 5月21日(水)/ オンデマンド研修 5月23日(金)〜6月6日(金)

呼吸・循環は生命を支える最も重要な機能の一つです。私たち人間は,呼吸せずに生命維持を行うことができませんし,同様に心臓が停止していても生命維持はできません。そのため,何らかの呼吸・循環障害をきたしたとき,それは生命の危機的状況につながりかねない脅威となります。私たち看護師は,これらの異常をいち早く察知する必要があります。そのためには,フィジカルアセスメントが必須となります。そしてフィジカルアセスメントの根底にあるものは,基本的な呼吸・循環のメカニズムついての理解なのだと考 えます。本セミナーでは,基本的な呼吸機能,循環機能について学習し,フィジカルアセスメントについて考えていきたいと思います。

発信会場:西多摩療育支援センター(東京都あきる野市)

質疑応答

  • 一般的に無気肺を一番起こしやすい部分はどこですか?また、その理由を教えて下さい。
    無気肺を起こしやすいのは寝たきりの方です。想像していただければわかるのですが、分泌物は、重力の影響を受けて背中側にたまります。そのため下側肺障害あるいは荷重側肺障害が起こしやすくなります。つまり背中側の方、下葉に無気肺が起こりやすくなります。中でも左下葉は心臓の圧迫を受けることになるため、一番起こしやすい場所であると言えます。その次に右下葉、右上葉と続きます。右上葉は右主気管支が短く、右上葉枝が気管分岐部を越えてすぐのところにあるため、片肺挿管時や気管吸引の影響などによって無気肺を併発することがあります。
  • 講義の中で呼吸筋についてのお話がありましたが、呼吸筋のトレーニングには、どのような方法があるのでしょうか。具体的な方法を紹介して下さい。
    人工呼吸器を長い間使っていて何とか離脱したいという時など、呼吸筋をトレーニングする場合がよくあります。呼吸障害やCOPDなどの方の呼吸筋トレーニングと、急性期における呼吸筋トレーニングとはまた別になってきます。(人工)呼吸器が離脱できるような急性期の場合にはどのようなトレーニングがあるかと申しますと、呼吸筋というのは上肢や頚部、肩の筋肉と共通するものが多々あるので、上肢や頚部の運動を行うことが有効です。たとえばペットボトルや砂嚢を持ち上げて手を上下させる、あるいは頭に手を当てて逆側から力をかけてグッと押していただき、首の筋肉を鍛えるような運動が、呼吸筋のトレーニングになったりします。それから慢性的に呼吸障害がある方は、呼吸筋を鍛えるというよりも全体的な筋力のアップ、たとえば離床を進める、少しずつ歩く量を増やす、そういった負荷を加えることが呼吸筋のトレーニングにつながることになります。
  • 慢性呼吸不全のようなCOPDあるいはCOLDの患者さんの場合など、あえて横隔膜を意識させるような呼吸の訓練というのはエビデンス的にどうなのでしょうか。
    COPDの方は横隔膜が伸びきっています。横隔膜が伸びきった状態で腹式呼吸の指導をして、意味はないということです。よく腹式呼吸をしなさいと言いますが、それはCOPDの方などには該当しません。むしろCOPDの場合などは呼吸法として口すぼめ呼吸をしたり、落ち着いて呼吸する練習をさせたりした方が良いと言われています。何でもかんでも腹式呼吸の訓練をすれば良いというわけではないとご理解下さい。
  • フィジカルアセスメントとは直接関係ありませんが、腹臥位の呼吸への効果について質問です。重症心身性障害児や高齢者への腹臥位の効果が言われておりますし、一般の方にも推奨されてきております。先生のお考えをお聞かせ下さい。
    腹臥位の効果には即効(即時)性の効果と遅発性の効果があります。即効性というのは、腹臥位にすると換気血流比が変わることによるものです。呼吸障害があり人工呼吸器が装着されている、あるいは荷重側肺障害があるような場合、換気が少なかった背中側に血流は多く流れています。それが腹臥位にすることによって換気が多い前側(前胸部)に血流が多くなります。このように換気と血流の割合が改善することでガスがよくなります。遅発性の効果というのは、背中側に溜まっていたような痰が、ドレナージできるなどの効果により出現するもので、時間を経て徐々によくなるようなものを言います。

    しかし、酸素化を良くすれば、全て良いというわけではなく、何でもかんでも腹臥位にすれば良いとは限りません。有効だと思われる症例を選択していくことが必要だと考えます。たとえば誤嚥性肺炎を起こし、明らかに背中側に分泌物が貯留している場合に体位ドレナージを図るという意味で腹臥位にすることは良いのですが、ただガスが悪いからと言って腹臥位にするというのは疑問があります。どういった目的で腹臥位にするのか目的と適応を考えていかなければいけないと思います。

  • 聴診で痰の貯留があった場合,すぐに吸引した方がいいのでしょうか?
    皆さん吸引を行ったことがあると思いますが、吸引カテーテルがどこまで届いているかわかりますか? 奥まで入れてもそこに痰がなければ意味がないわけです。肺野の末梢で雑音が聞こえたからと言っても、吸引して引けるところに痰があるかどうかが問題です。吸引カテーテルを奥まで挿入したとしても、主気管支あるいは区域気管支の部分までです。本来であれば主気管支レベルのところに痰が溜まっていなければ吸引の意味がないわけです。そのため体位ドレナージなどを考え、患者状況に応じアセスメントして吸引をすることが必要です。吸引は何を目的に行っているかといえば、痰をとることではなく、気道の開存のために行っているわけです。ですから挿菅チューブ内に見えるくらい痰が噴出しているような場合などはすぐに吸引が必要ですが、聴診器で雑音が聞こえたから、すぐに吸引というのは、ちょっと違うと思います。